Opening impressionsはチェスの様々なオープニング(序盤定跡)について私の私見を含めて、簡単に網羅解説していこうというシリーズです。
シシリアン アラピン
Sicilian Alapin
1.e4 c5
2.c3
いきなりc3?と思うかもしれませんが、これがアラピンバリエーションです。白はc3, d4としてd4をポーンで支えることでセンターの支配を意図します。
しかし、シシリアンにおいてはe4のポーンを守るのが難しいことや、ナイトにとって有用なc3のマスが使えないことから、基本的にはセンターを維持することは出来ません。
アラピンに対する黒の対応として、以下の3つのラインを紹介します。
シシリアン アラピン 2…d5
Sicilian Alapin 2…d5
2…d5
2…d5はスカンジナビアン(1.e4 d5)で白がc3、黒がc5を追加で指している形になります。ポイントはc3のマスが使えないことで、
3. exd5 Qxd5の後にNc3ができません。そもそもセンターの支配を形成する計画はいきなり頓挫します。とはいえ、d5のクイーンもどこかでターゲットになる可能性がありますし、d4のポーンは維持できるので、白のほうがセンターへの影響力は保持できるでしょう。
シシリアン アラピン 2…Nf6
Sicilian Alapin 2…Nf6
2… Nf6
3.e5 Nd5
4.d4
個人的にはこの2… Nf6のラインが黒のメインラインではないかと思います。これもアレキンディフェンス (1.e4 Nf6)にc5とc3を付け加えた形になります。ひとつ重要な要素としては、この変化はSmith–Morra Gambit(1.e4 c5 2.d4 cxd4 3.c3)に対して3… Nf6としてもほぼ同じ形になる点です。Smith–Morra Gambitは「ほぼ」成立しているギャンビットと言われており、シシリアンプレイヤーにとって危険な変化です。3… Nf6はギャンビットを拒否し、比較的手堅いアラピンに変化できます。
2…Nf6のアラピンはd5のやや不安定なナイトと展開が遅れがちなピースをどう捌くかが重要になります。また、白の手順は手順前後が可能なものが多く、そのあたりに幻惑されるイメージが実体験としてあります。
シシリアン アラピン 2…d6
Sicilian Alapin 2…d6
2… d6
3.d4 Nf6
白の狙いを無視したかのような2… d6はGrandmaster Repertoireのシシリアン本の中で取り上げられたことでメジャーになったのではないかと思います。白のe4のポーンはいずれにしろ守り難いのでNf6を遅らせて、先にd6としてe5をけん制できるのならばその方が指しやすいとは思います。気を付けたいのは4.dxc5に対してNxe4はQa5+でナイトが落ちます。ですので、
4.dxc5 Nc6
5.cxd6!? Nxe4
とここでe4を取ります。これに欲張ってe7のポーンを取るとQxd1からNxf2+で黒良しです。
毒のあるMove Order
白が2手目にNf3と指して、黒のd6を誘う手順もあります。いくつか注意が必要な変化です。
1.e4 c5
2.Nf3 d6
3.c3
一つのポイントしてはこの変化では当然2… d5ができません。私は2… d5を自分のレパートリーに入れたことがないのですが、それはこの変化が原因です。また、この変化にもタクティクスというか罠が仕掛けられることがあります。黒の次の手はNf6が自然でしょうが、
3… Nf6
4.Be2!? Nxe4?
さて、cポーンを突いたらクイーンの動きにも注意する必要があります。
5.Qa4+でナイトが落ちます。2手目のNf3でd6を突かせた効果がここにも出ています。私はこの変化にレート2000越えのプレイヤーが公式戦で引っかかったのを見たことがあります。気を付けてください。
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