シシリアン モスクワバリエーション ーOpening impressionsー

Opening impressionsはチェスの様々なオープニング(序盤定跡)について私の私見を含めて、簡単に網羅解説していこうというシリーズです。

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シシリアン モスクワバリエーション
Sicilian Moscow Variation

1.e4 c5
2.Nf3 d6
3.Bb5+
Bd7
4.Bxd7 Qxd7

 このビショップでのチェックがモスクワバリエーションのポイントになります。チェックという強制手でビショップを展開することにより、駒交換と引き換えにキャスリングを早め、1手稼ぎます。もちろん、黒の2手目がd6でないパターンではチェックにならないので、ニュアンスが変わってきます。3手目の黒はBd7ではなくNc6やNd7なんかもありますが、個人的にはビショップをぶつけて白に決断を迫る手の方が安心感があります。一方で、白がビショップを逃げたり、守ったりしてしまっては、キャスリングが早まらず、当初の狙いが実現できません。駒交換は基本的にはスペースの狭い黒を利するわけですが、それを引き換えにして別の有利点を築くという考え方です。その後の考え方はキャスリングをしてeポーンをルークで守るか、すぐにc4とついてくるかに分かれます。それぞれに考え方がありますが、共通するポイントはNf6とeポーンを攻撃される前に1手入れられることです。

  • 強制手(チェック)でビショップを展開してキャスリング
  • e4のポーンが攻撃される前に1手稼ぐ
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プラン1.キャスリングして、ルークでeポーンを守る

5. 0-0 Nf6
6. Re1

 ここまで先程の記述の通りです。Re1とルークでe4のポーンを守る変化はルイロペスではポピュラーですが、シシリアンでは珍しいです。黒にとっては慣れない変化であるため、気を付ける必要があります。

この変化のポイントは白がNc3とここで指さなくていいという点です。cポーンを突く狙いが生じます。

通常のシシリアンであれば、黒のNf6に対してNc3とポーンの前にナイトを置くことになります。そうするとcポーンが当然ながら突けません。

ここでの白の主要なプランはc3, d4としてセンターの支配を意図するものです。

  • 黒のNf6に対してNc3ではなく、Re1と守れる。
  • cポーンを突く狙いができる

c3, d4とセンターを取りに行く

6… e6
7.c3 Nc6
8.d4
cxd4
9.cxd4

9…d5!

黒9手目のd5がこの変化での最も重要な手でしょう。ここで突いておかないとNc3とされて、e4に入れなくなります(論理的には入れますが、Nxe4とされてポーンが弱くなります)。そうなると黒がはっきりと悪いので、気を付けましょう。個人的にはモスクワバリエーション全体の中で黒にとってもっとも重要な1手です。

10.e5 Ne4

白は結局センターの支配はできず、スペースを取るプランへと切り替えました。e4のナイトをこのままにしておくことは白にとって不利ですので、ナイトを交換するか、f3として追い払うかの選択になります。

ナイトを交換する場合

Nc3やNd2によって、簡単にナイトの交換ができます。しかし、既に白マスビショップも交換しており、2つのピースが交換されています。「陣形を崩さずにピースを2つ交換できれば、黒はほぼイコール」というのが私の持論なので、黒問題ないです。

f3として追い払うプラン

実際に考えてみると分かるのですが、f3を指そうとすると、かなり手順が掛かります。その間に黒は十分に展開できますので、問題ないはずです。

プラン2.Nc3の前にc4と突く

Maroczy Bind

5.c4 Nf6
6.Nc3

前述のとおり、黒のNf6の前にc4を突いているので、通常のシシリアンと異なりc4とスペースを取ることができている。

6… g6
7.d4 cxd4
8. Nxd4

 上記のポーン構造(ピースの配置は別にして)がMaroczy Bindです。通常はアクセラレイテッドドラゴン(1.e4 c5 2.Nf3 d6 3. d4 cxd4 4.Nxd4 g6 5.c4)から派生する変化で、黒がパッシブに耐える変化として有名。このアクセラレイテッドドラゴンではNf6を遅らせているためにc4が突けるわけです。

 ただ、ここでの白の問題点は白マスビショップを交換してしまっていること。黒の問題点はいくつかありますが、その一つがこの白マスビショップだったので、これを交換してしまっていることは当然黒に有利に働きます。

Sicilian Warfare

Slay the Sicilian!

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