スコッチゲーム ーOpening Impressionsー

Opening impressionsはチェスの様々なオープニング(序盤定跡)について私の私見を含めて、簡単に網羅解説していこうというシリーズです。

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スコッチゲーム
Scotch game

1.e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. d4

定番のNf3 Nc6の手順に対して、d4といきなりセンターポーンを突く変化がスコッチゲームです。シシリアンにおけるオープンシシリアンと似たような考え方ですが、シシリアンにおいてオープンシシリアンがメインラインであるのに対して、スコッチゲームはルイロペス、イタリアンゲームに続いて白の3つ目の選択肢というイメージです。黒のeファイルを開くことで、白のe4のポーンへの反撃がやりやすいことがオープンシシリアンとの違いだと思います。また、元世界チャンピオンのカスパロフが1990年代に用いて以降、比較的ポピュラーな変化になりました。アマチュアレベルではよく指されていると思います。

3… exd4 4. Nxd4

黒はexd4とポーンで取るのがメインです。

まずはこのポジションの考え方が重要です。展開しているピースの数はそれぞれナイト1つずつで互角ですが、現状で黒番です。つまり、ピースの展開という意味では黒が1手得をしていることが分かります。黒が次にどのピースを展開しようかと考えると、c8のビショップはすぐには展開できないので、黒マスビショップを展開するか、Nf6とするかになるでしょう。実際、その手がメインラインです。

一方で、白は黒のe5のポーンを交換しているため、白だけがe4のセンターポーンを持っています。黒はd5とポーンを簡単に突けないので、白の方がセンターの支配力で上回っています。また、ポーンの交換によって白のナイトはアクティブなd4の位置に配置されており、これも白の優位点です。

ポーン交換によってさまざまなラインが開いており、ピースを使ったアクティブな戦いになりやすいことがスコッチゲームの特徴です。

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スコッチゲームの定跡手順

4… Bc5

ビショップを展開させつつ、中央の好位置のナイトを攻撃するロジカルな手です。

白はBe3とあくまでもナイトを支えに行く、Nxc6と諦めて交換する、Nb3とビショップを攻撃しつつ逃げる3つが主な選択肢です。

白は展開が遅れているので、いったん黒の攻撃を受ける形になることが多いですが、ここで黒が主張点を作れないとセンターを支配している白に優位に働きます。

黒としては、Nxd4としたことでやや弱まっている白のキングサイドや、e4のポーンを狙ったり、d5のポーンブレイクを狙うというのが考え方になるでしょう。

4… Nf6

ピースを展開しながらe4のポーンを攻撃するNf6もロジカルです。

5. Nxc6 bxc6 6. e5

ただし、白からNxc6からe5とポーン形を崩しながらナイトを攻撃する手が生じます。

6… Qe7 7. Qe2 Nd5 8. c4 Ba6

ナイトを逃げる前にQe7とピンを利用することがポイントで、Qe2を強制することで、白の展開を阻害(f1のビショップが出しずらい)します。好位置にいる黒のナイトをc4で追い払おうとした際にBa6と再びピンを利用するこのポジションはとても有名な定跡手順です。

白は展開で遅れており、なおかつ駒の展開の仕方も難しいです。また、e5と伸ばしたポーンも弱点になりがちです。一方で、黒の駒組も現状ではうまくいっているものの、危うい印象があります。エンドゲームになるとポーン構造に弱点も抱えています。白黒共にある程度準備していないと難しい変化かな、と思います。

4… Qh4 and 4… Qf6

Qh4やQf6と黒が序盤でクイーンを展開する手もスコッチゲームではよく見ます。このようなクイーンを早々に展開してくる変化では、ナイトやポーンでクイーンを攻撃しつつ展開や駒組を進められるかが重要です。

一方で、クイーンは強力な駒なので、自分のピースがタダ取りされないかは注意が必要です。Qh4の局面ではe4のポーンが狙われています。ただし、このポーンを相手のクイーンに取らせることで、さらに展開の優位を目指すことも考えられるので、単純にポーンを守らなければいけないわけでもありません。

もう1点、序盤でクイーンが動くデメリットがあります。クイーンがd8からいなくなることでc7の地点の守りがなくなります。この地点をナイトで狙う筋は常に注意する必要があります。

まとめ

スコッチゲームはe4e5系の定跡の中では(ギャンビット以外では)序盤からオープンな局面になる珍しい変化です。白にとっても黒にとってもタクティカルな展開になりやすく、慎重かつ大胆に指す必要があると思います。

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