チェスの基本として別記事で大会や試合で使われる用語について説明しました。この記事ではチェスの内容に関する用語について説明します。別記事で解説しそうなテクニカル用語についてはあまり載せないようにしました。チェスは海外発祥なので、カタカナ語がつかわれることが多いです。日本語訳にすれば当たり前の用語も多いですが、しっくりくる訳語がなかったり、習慣であったりといった理由で使われている用語も多いです。
- ピース
piece - マイナーピース・メジャーピース
minor piece/major piece - スレット
threat - マヌーバ
maneuver - スクエア
square - ファイル・ランク
file/rank - ダイアゴナル
diagonal - バックランク
back rank - ウッドプッシャー
Wood pusher - サクリファイス
sacrifice - コンビネーション
combination - マテリアル
material - イコール
equal - ブランダー
Blunder - オンリームーブ
Only move - イニシアティブ
initiative - キングサイド・クイーンサイド
king side/queen side - パーペチュアルチェック
perpetual check - パスポーン
passed pawn
ルール関連
チェック・チェックメイト
check/checkmate
キングに攻撃を仕掛けるのがチェック、チェックされた上に動けないのがチェックメイトであり、チェックメイトした側が勝ちになるのがチェスのルール。詳細はルールのページを参照してください。チェックメイトではなく、単にメイトという呼び方をすることも多い。
漫画などで間違って使われることも多い。なぜか「チェックメイトは王手のこと」という間違いをよく見かけるが、チェックメイトは詰み、チェックが王手である。
キャスリング
castling
キングをルーク側に2マス動かし、ルークをキングの逆側に動かす特別動作のこと。詳しくは特殊ルールを参照。hファイル側にキャスリングすることをショートキャスリング、aファイル側にキャスリングすることをロングキャスリングと呼ぶ。
ドロー
draw
引き分けのこと。どうなれば引き分けになるかの具体例についてはルールのページを参照ください。
プロモーション
promotion
日本語では「昇格」の意味。ポーンが最も奥のマスに到達すると、ポーンとキング以外のどのピースにも成ることができるルール。ポーンのままでいることはできない。通常は最も強い駒であるクイーンにプロモーションするが、それ以外の駒にプロモーションすることはアンダープロモーションと呼ばれる。
アンパッサン
en passant
ポーンが初期配置から2マス進んだ場合の次の相手の手でのみ、特殊な動きでそのポーンを取ることができる特別ルールのこと。詳細についてはルールの記事を参照のこと。
チェス全般
ピース
piece
通常、チェスの駒を指す言葉だが、ポーン以外の駒のことをピースと呼ぶことも多い。
ピースダウンはポーン以外の駒損のことを指すが、一般的にはナイトやビショップの駒損の場合に使い、ルークの場合はルークダウン、クイーンの場合はクイーンダウンと呼ぶことが多い。
また、ピースプレイはポーン以外の駒を使ってアクティブに攻めるときに使う言葉。
マイナーピース・メジャーピース
minor piece/major piece
マイナーピースはナイトとビショップのこと、メジャーピースはルークとクイーンのこと。なぜかポーンとキングには対応する呼び名がない。
スレット
threat
直訳すると「脅威」という意味。メイトや駒得、単にポジションをよくするための手、ルークの侵入をはかるなどなど、なんでもいいんですが、自分や相手の狙いのことをスレットと呼びます。
「白は黒からのメイトスレットに対処しなければならない」
なんて感じの使い方をします。
マヌーバ
maneuver
1手ではなく連続する駒の動きの総称。普通は一つの駒を数手かけて違うマスに移動させることを言う。基本的には駒配置を改善すること。現在進行形でマヌーバリングと呼ばれることも多い。
スクエア
square
マスのこと
ファイル・ランク
file/rank
ファイルとはチェスのマスの縦1列のことを呼ぶ。チェスではアルファベットで縦の列を区別しているので、「aファイル」、「fファイル」などという言い方をする。
ランクとはチェスのマスの横1列のことを呼ぶ。横の列は数字で表されているが、序数詞で表され、セブンス(seventh)ランクというような呼び方をする。
ただし、セブンスランクやセカンドランクとは呼ぶが他のランクはあまり言葉として使われれない。また、ファイルとは違い、白からみたセブンスランク、黒から見たセブンスランクなどと言われることが多い。
ダイアゴナル
diagonal
マスの斜めのラインのこと
バックランク
back rank
上記のランクの定義で言うファーストランクまたはエイスランクのこと。ただし、単にランクの位置を示すというよりは、キングが閉じ込められてメイトにする(される)状況と絡めた使われ方をすることが多い。
「バックランクの弱さを利用して」
「白はバックランクに気を付ける必要がある」
などが代表的な用法。
ウッドプッシャー
Wood pusher
木製の駒をただ推し進めているだけというニュアンスから、何も考えずに指している人を揶揄する言葉。
サクリファイス
sacrifice
ピースをそのピースよりも価値の低い駒と交換、あるいはタダで取らせること。通常はチェックメイトやより大きな駒得を狙っている。当然、失敗して投了することもある。
すぐにチェックメイトにならない、駒損を取り返せない場合についてはロングターム(長期的な)サクリファイスと呼ばれることもある。
コンビネーション
combination
タクティクスを実現する連続する手のこと。
マテリアル
material
日本語の訳語は難しいが、主にピースの損得を考える場合のピースのこと。
「マテリアルはイコールだ(駒の損得がない)」
「マテリアルばかりにこだわっていてはだめだ(駒の損得にばかりこだわっていてはだめだ)」
というような使い方をする。
イコール
equal
駒の損得や形勢が互角のこと。
ブランダー
Blunder
悪手のこと。
オンリームーブ
Only move
他に手がなく、唯一の応手であること。厳密にはチェックメイトを防ぐ唯一の手ということになるが、その手を指さないとクイーンが落ちる、ピースが落ちるなどという状況でも用いる。
イニシアティブ
initiative
日本語にすれば主導権。チェスにおいては、相手に何か(メイトや駒得その他)を狙われていて、それに応対する形でしか手をさせない状態が続いていることを「イニシアティブ(主導権)を握られている」と呼ぶ。1手ではなく、数手以上その状態が続く場合に使うことが多い。
キングサイド・クイーンサイド
king side/queen side
チェス盤上で真ん中よりも初期配置のキング側(白なら右側、黒なら左側)をキングサイド、初期配置のクイーン側ならばクイーンサイドと呼ぶ。
どちら側にキャスリングするか示す場合にも使い、ショートキャスリングのことをキングサイドキャスリング、ロングキャスリングのことをクイーンサイドキャスリングとも呼ぶ。
パーペチュアルチェック
perpetual check
一方の側からチェックを繰り返されること。通常は不利な側がチェックを続け、局面を進めることができないので、ドローになる。
パスポーン
passed pawn
同じファイルおよび隣接するファイルに相手のポーンがいないポーンのこと。パスポーンは相手ポーンに邪魔されずに進めることができる。ただし、自分のポーンよりも後ろ側に相手ポーンがいる場合には、邪魔されずに進めるので、これもパスポーンである。
チェスの序盤
序盤・定跡・オープニング
opening
3語とも全て初手からどのように指すかの知識を示す。微妙にそれぞれ意味やニュアンスが違うかもしれない。
序盤とオープニングは翻訳上同じ意味。ただし、単に文字通り「序盤(ゲーム開始後何手か)」のことを示すこともあれば、ルイロペス、シシリアンなどの定跡を示すこともある。
一方で、定跡は一般的名詞的な「序盤」ではなく、特定の手順について言及する場合に使う。
ブック・ブックムーブ
book/book move
定跡の手のこと。定跡手順から外れることをブックから外れるという言い方をする。定跡手順を記載した事典風の書籍(Modern chess openingなど)に由来すると思われる。
セオリー
theory
一般名詞としては「理論」を表す言葉だが、チェスの序盤においてはオープニングの手順あるいは手順にかかわる研究を指す言葉。
ギャンビット
gambit
オープニングでポーンを捨て、何らかの代償を得る手のこと。
~システム
ー system
オープニングの定跡のことだが、相手の指し手に関係なく一定の形に組む場合にシステムと呼ぶ。基本的に白番での定跡について言及するものだが、黒番でシステムと名が付く定跡があるかは私は知らない。以下のような例がある。
- ロンドンシステム
- フィアンケットシステム
チェスの中盤
ミドルゲーム・中盤
middle game
一般的には序盤の知識が終わった後を示すが、境界はそこまで明快ではない。エンドゲームとの境目も曖昧である。
勉強対象(本などでミドルゲームの指し方などとある場合)としてのミドルゲームは単なる中盤とは異なる意味合いがある。下記にあるポジショナルプレイに加えて、攻め方・守り方などのコツを含めてミドルゲームと呼んでいる。
戦術・戦略
tactics/strategy
英語ではタクティクスとストラテジー。本来的には軍事用語。なぜか日本人に逆の意味にとらえられていることがあるが、戦術が局地戦、戦略はより大局的な観点での考え方である。当然、チェスでも同様。一般的には中盤で使われることが多いが、序盤、終盤でも重要。
ポジショナルプレイ
positional play
駒の配置の重要性を意識したチェスの指し方という意味になるでしょうか。言葉のポピュラーさに比べると意外としっかりとした定義はないように感じます。
ツービショップ・ダブルビショップ・ビショップペア
two bishop / double bishop / bishop pair
どの単語も白マスと黒マスのビショップが両方とも残っている状態のことを示す。片方のビショップでは行けないマスを補完しあうので、その他のマイナーピースの組み合わせ(ビショップとナイトまたはナイト二つ)よりも強力であると考えられている。
アウトポスト
outpost
日本語に訳すのであれば拠点。相手から追い払われることがないマスのこと。通常相手陣地に近い位置(5段目より上)のマスについて呼ぶ。ナイトのように射程の短い駒にとっては特に重要である。
モチーフ
motif
チェスのタクティクスにおける典型的なアイデアのこと。もしかするとタクティクス以外でも使われるのかもしれないが、私は知らない。
具体的なモチーフの用語については基本の戦術パターンの記事を参考にしてください。
ホール
弱いマスのこと。通常はポーンで守られておらず、なおかつポーンで守ることができないまたは非常に困難であるマスのことを指す。
チェスの終盤
エンドゲーム・エンディング・終盤
endgame/ending
ある程度駒交換が進んだ局面のことを呼ぶ。ミドルゲームとの境目はそこまで明確ではない。クイーン交換がエンドゲーム突入と判断される場合が多いが、クイーンとポーンだけのクイーンエンディングも重要。
また、ポーンを昇格させることが目的になるのがエンドゲームと言われることもあるが、ポーンなしのポーンレスエンドゲームも知られている。
終盤だけがエンドゲームとエンディングという2種類の呼び方が一般的。オープンゲームは序盤とは異なる意味になるし、ミドリングという言葉は知られていない。
****エンドゲーム
ー endgame
****の部分にピースの名前を入れる。ポーン、ルーク、ビショップ、ナイト、クイーンが知られており、通常そのピースとポーン(ともちろんキング)だけが盤上にある場合のエンドゲームのことを呼ぶ。
ポーンレスエンドゲーム
pawnless endgame
ポーン以外のピースの組み合わせによるエンドゲームの総称。当然ながら、チェックメイトの可能性がなくなった組み合わせについて考慮されることは通常ない。
- ルーク+ビショップVSルーク
- ルーク+ナイトVSルーク
- クイーンVSルーク
などが有名
オポジション
opposition
1マス挟んでキング同士が向かい合っているポジションのこと。このポジションで相手に手番を渡すと相手方向に侵入できる。
奇数マス離れて向かい合っている場合にもオポジションの関係が成立し、ディスタントオポジションと呼ぶ。
向かい合っていなくても、相手キングと作る長方形で四つ角が同じ色の場合もオポジションの関係になる。
コレスポンディングスクエア
corresponding square
日本語直訳は「対応するマス」。主にポーンエンディングにおいて使う。相手キングがあるマスに居る場合、自分のキングはここにいないと負ける、というような対応関係が成立しているマスの組み合わせのことを呼ぶ。マスの対応関係は1対1とは限らず、2対1のような不均衡な場合もあり、それを利用して相手方向に侵入を果たして勝つことができることがある。
トライアンギュレーション(三角法)
triangulation
キングを直線的に動かすのではなく、下がったり、ウロウロしたり(?)してオポジションや相手方向への侵入を実現する技術のこと。キングの動きが三角形に見えることからこの呼び名が付いている。
キースクエア
key square
直訳すれば「カギとなるマス」。そのマスに到達すれば有利な側が勝つ、または不利な側がドローにできることが確定するマスのこと。そのマスにたどり着く方法を考えればよいので、読みの効率化に役立つ。ただし、どのマスがキースクエアなのか見出すことは局面によっては簡単ではない。
まとめ
本記事では、チェスのルール、戦術、戦略などに関連する用語をまとめました。試合形式などの用語については別記事でまとめています。
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