Opening impressionsはチェスの様々なオープニング(序盤定跡)について私の私見を含めて、簡単に網羅解説していこうというシリーズです。
ナイドルフ バリエーション
Najdorf Variation
1.e4 c5
2.Nf3 d6
3.d4 cxd4
4.Nxd4 Nf6
5.Nc3 a6
メインラインであるオープンシシリアンの中でも、最もポピュラーな変化です。トップレベルからアマチュアまで幅広いファンを持ちます。Eも指します。ナイドルフの魅力は、白の応手によりますが、激しい攻防からポジショナルな攻防まで幅広い可能性を持っていることではないかと思います。
歴史的に見ても、ボビーフィッシャーやカスパロフという最も有名な二人の世界チャンピオンが好んで用いていたことがこの定跡の人気につながっていると思います。
5…a6の狙いは、次にe5と指した際にb5のマスを使われないようにすることです。ですので、黒の6手目は白の応手が許せばe5になります。ただし、後述のシュベニンゲンのようにe6とすることも可能です。カスパロフは好んでこの手順を用いていました。
ナイドルフの変化は白の次の6手目によって分類されます。
6.Bg5
古くからナイドルフへのメインラインとして知られる変化です。
ここでのe5はBxf6からNd5と入られて黒が悪いです。このため、e6と応じますが、これに対するf4に黒がどのように応じるのかでまた様々な変化があります。
上図のポジション、f6のナイトがピンになっているので、e5のポーン突きがスレットになっています。
ピンを解消する
ピンを解消するBe7が最も素直な応手ですね。古くからあるラインです。白はQf3からロングキャスリングして黒を攻めたてます。黒はキャスリングを遅らせてクイーンサイドを展開し、反撃に備えます。
クイーンを逃げる
白からのBxf6を気にせず、クイーンを逃がす変化です。Qb6やQc7が知られます。
特にQb6はb2のポーンを狙っており、ポイズンポーン(毒入りポーン)バリエーションとして有名です。世界チャンピオンのボビー・フィッシャーやカスパロフに好まれ、チェスの中でも最も研究されている変化の一つです。
e5を許す
Nc6やb5としてe5を許してしまう手もあります。「え?ピース落ちるじゃん」と思う人も多いと思いますが、実はh6, g5としてピンを解消する手があるので、e5を突かれたらナイトが落ちるわけではありません。Nc6の変化はまさにこのh6, g5を指します。一方で、b5はPolugaevsky Variationと呼ばれ、ピースをサクリファイスする変化です、、、、
6.Be3
1990年代以降ポピュラーになった変化がこの6. Be3です。英国のプレイヤーが好んで指したため、English Attackとも呼ばれます。ポイントはQd2, f3,0-0-0と展開した後にg4とキングサイドのポーンを突いていきます。
このポーン突きはキングサイドアタックにも効いてきますが、黒がe5と突いた場合には、白はg5からd5を守るf6のナイトを追い払いd5のアウトポストを確保する戦略的な狙いがあります。
近年盛んに指されていたために様々な変化がありますが、最近の書籍では黒からh5と突いて白からのg4をけん制する変化が採用されています。その他には白の狙いを無視して、クイーンサイドのポーンを突いて攻め合いに持っていく変化がメインラインとして知られています。
黒でナイドルフを指すのであれば、Bg5と並んで準備が必須の変化です。
6.Be2
最もナイドルフらしい変化になるのが、このBe2です。
白はショートキャスリングからa4やf4のポーン突き、Nd5のアウトポスト狙いなどを絡めながら、攻めます。
黒はe4への反撃やcファイルからの反撃、fポーンとeポーンの交換が起こればe5のアウトポストを利用するなどのアイデアがあります。
アウトポストに入ったピースの交換によるポーン構造の変化などにも注意する必要がります。
個人的にはこのBe2の変化から勉強することをナイドルフプレイヤーにお勧めします。
6.Bc4
f7の地点を狙うBc4は世界チャンピオンの名前を取ってフィッシャーアタックとも呼ばれます。シシリアンは白が素早く攻める変化と言われますが、その中でもこの変化は白が攻めに行く変化で、主導権を失えば黒に反撃を許す危険性もあります。
c4のビショップの影響で黒はe5は指せず、次の手でe6とするのが一般的です。重要な点は、白からはいつでもBxe6, Nxe6の狙いがあるので、e6の守りが薄くならないように注意する必要があります。変化によっては白がピースを切って3ポーンを得て戦うのが普通の場合もあり、黒は覚悟をもって臨む必要があります。
その他の手
6.f4
黒からのe5に対してNf3と戻ることが白の意図です。
黒はBe7、Bg4、Nbd7と問題なく展開できれば、かなり指しやすいと思います。白はBc4と攻めの意図を続けますが、黒マスビショップの展開に難しさを抱えます。黒からのQb6+でb2を狙われますし、そもそもf4のポーンが黒マスビショップを邪魔しています。
上記のような問題のためか、昔に比べるとほとんど指す人がいなくなった印象です。
6.h3
白からの狙いが捉えづらい手ですが、g4からキングサイドのポーンを早めについていくことが狙いです。近年流行っている手で、私自身もそれほど対策しきれていませんが、白がキングサイドから攻撃してくる以上、クイーンサイドから反撃を仕掛けるのがセオリーかと思います。
チェスコムで学ぶ
まとめ
ルイロペスと並んでチェスの定跡の王様と言えるのが、このナイドルフです。当然ながら様々な変化が知られており、勉強も必要ですが、私見では比較的ロジカルな手順も多く、オープニングで理不尽に負けるようなことも少ないです。あなたも世界のトッププレイヤーと同じ変化を指したくないですか?だったら、ナイドルフでしょう。
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