ドロー(引き分け)に関するルール 【チェスのルール】

チェスにはどうやら引き分けがあるらしい、ということをご存じの方もいるでしょう。ではどういう場合に引き分けになるのかは理解しているでしょうか。いくつかのパターンがありますので、ご紹介します。

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ドロー は引き分けのこと

チェスにおいて「ドロー」という言葉を聞くことがあると思いますが、引き分けのことです。

英語のdrawという動詞は絵を描くという意味や引っ張るという意味がありますが、引き分けにするという意味もあります。

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チェスにおいて引き分けになるパターン

チェスでは、引き分けになるパターンが4種類あります。それぞれ紹介します。

1.相手をチェックメイトする可能性が両者なくなった場合

駒交換が進み、相手をチェックメイトすることが絶対にできなくなった場合には引き分けです。

チェックメイトとは何かについては別記事で扱っています。

チェックメイトできるかできないかという判断は意外と難しいです。大会などではアービターと呼ばれる方が判断してくれますし、オンライン対局であれば自動で判断してくれるので大丈夫です。

ピースが少なくなった際にチェックメイトできる組み合わせについては別記事で扱っています。

2.3回同一局面になったとき

3回完全に同一な局面が現れた場合にはドロー(引き分け)になります。手番(その局面で白番であるか黒番であるか)も同一でなければなりません。

よくあるのが、不利な側が相手のキングをチェックし続けるパターンです。

上の図では白がかなり駒損をしているので、チェックを繰り返すことによりドローになるでしょう。

一方で、長い対局の中で連続ではなく3回同一局面が現れることもあります。このような場合にはきちんと棋譜(対局の記録)をとっておき、同一局面を主張する必要があります。公式戦において棋譜の記録が求められている理由の一つです。

これもオンライン対局であれば自動判定でドローになります。

3.対局者同士で合意した場合

対局している同士でドローに合意した場合にドローになります。

このドローの提案の仕方に関しては、FIDE(国際チェス連盟)の規定において正式のやり方(時計を止める、棋譜の記入など)があるのですが、私は覚えていません。少なくとも国内の大会において困ったことはありません。普通に「ドローにしませんか?」と相手に尋ねればよいと思います。ドローオファー(ドローの提案)と呼びます。

ただし、1手ごとにドローオファーをし続けるようなことはマナー違反です(もしかするとアービターから注意を受けるかもしれません)。ネットチェスではボタンを押すだけでドローオファーができることから、何度もオファーされることがあります。ネット対戦とは異なり、相手が目の前にいることですから、最低限マナーに気を使うようにしましょう。

正式なドローオファーの方法は以下のようになります。大事なことは相手の手番中にドローオファーをしないということです。相手の手番では相手が手を考えているわけですから、妨害行為とみなされる可能性があります。

正式なドローオファーの方法
  1. 自分の手を指す
  2. ドローを提案する
  3. 時計を押す

グランドマスタードロー

一方で、この合意ドローが悪用されるとして批判を招くことがあります。グランドマスタードローと呼ばれ、試合前にあらかじめドローにすることを対局者同士が相談して決めていることがあります。グランドマスター同士で行われることが多いので、こう呼ばれています。長いトーナメントの間で休憩をしたい場合や、トーナメントの最終ラウンドで獲得賞金をお互いに確保したい場合などが動機でしょう。

一般的なスポーツではこれは八百長行為になるのでしょうが、チェスでは合意によるドローが認められているので、不正とは言えません。そこが問題なんですね。

大会によっては30手以内の合意ドローを禁止するなどの処置で対応していることがあります。

4.50手ルール

50手以上駒交換がなく、ポーンの動きがない場合にドローを主張できます。この場合にも棋譜の確認が必要です。

駒交換もポーンの動きもないまま両者最善の手を指し、相手キングをチェックメイトする手順はないと考えられていたために作られたルールですが、実はそのような例が存在することが示されています。しかし、50手ルールは継続されています。

ちなみにチェスにおける1手は白、黒双方が指して1手と数えるため、駒の動きとしては100回動きます。

ドローはつまらないか?

ステレオタイプな批判として、「チェスには引き分けがあるからつまらないし、競技として欠陥がある」と言われることがあります。これに対して「ドローがあるからチェスは奥深くなっている」というような反論もステレオタイプなのであまり言いたくありませんが、個人的に思うことはいくつかあります。

将棋や囲碁の場合は?

私は将棋や囲碁に詳しいわけではありませんが、チェスの引き分けをそれほど批判できるのだろうかと思わされるルールがあります。批判する人はそのようなルールの存在を知らないのかもしれないとも思います。

将棋の場合

将棋の場合にも「千日手」と呼ばれるチェスにおける「3回同一局面」とほぼ同じ引き分けのルールがあります。もちろん引き分けになる割合はチェスの場合よりもはるかに少ないです。

千日手よりも個人的に衝撃であったのは「入玉」というルールです。両者の王様が相手の陣地に入った場合には持将棋で引き分けになります(条件があります)。

その理由が入玉した王様を詰めることが難しいからだということですが、これは競技としての欠陥にはならないのでしょうか。

一方で、より衝撃だったのは互いに入玉した際に、両者の駒の戦力を点数化し、その点数によって引き分けか勝ちかが決まるというルールです(詳しくは将棋サイトを検索してください)。初めて聞いた時、「UNOかよ!!」と思いました

囲碁の場合

囲碁の場合には先手後手でハンデが付けられています。囲碁は簡単に言えば陣地の大きさを競い合う競技ですが、「コミ」と呼ばれるハンデが付けられており、先手の方が陣地を多くとらなければ負けになります。

この「コミ」は勝敗を確実につけるアイデアでもありますが(陣地に小数点以下を入れることで引き分けがなくなります)、そもそもこのコミ(ハンデ)の数字が時代と共に変遷しており、任意性のあるルールだと思います。

ドローのアイデアの魅力

上記の議論は他のボードゲームの欠点を指摘しただけですが、もちろんドローの可能性があることがチェスの競技としての幅を広げていることも事実です。

一見すれば絶望的に見える局面でも様々なアイデアを駆使してドローにするような魅力的な手順が実戦でも現れることがありますし、チェスプロブレムではそのようなアイデアを駆使して美しい手順の局面が作られることがあります。詰将棋にはない魅力ではないでしょうか。

また、チェスの終盤ではお互いの戦力に差があるが引き分けにしかならない局面が多数あります。そのような局面では現代のAIを駆使しても正確な判断ができません。将棋の終盤とは対照的ではないでしょうか。

まとめ

本記事では、チェスにおける引き分けのルールについて説明しました。チェスには引き分けがあることは知っていてもどのような時に引き分けになるか知らない方も多かったのではないでしょうか。

その他のルールを確認したい方にはまとめ記事を用意しています。

マンガで覚える図解チェスの基本
小島 慎也 (監修)

ここからはじめるチェス
渡辺 暁 (著)

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