チェスにおける戦術は「タクティクス」と呼ばれ、数手から10手程度で駒得をする方法のことです。ここではその基本的なパターンをまとめました。チェスは99%がタクティクスと言われるほど重要ですので、しっかり学びましょう。
タクティクスのパターン(モチーフ)
チェスにおけるタクティクスを理解するためには「モチーフ」と呼ばれる典型的なパターンを理解する必要があります。典型的なパターンを学習することで、実戦で類似の形が現れた時に応用することができます。
この記事ではチェスにおけるタクティクスのモチーフの代表例を紹介します。
基本となるタクティクスのパターン
ピン
Pin
動くと価値の高い駒が取られてしまうので、動けなくなることを「ピン」と呼びます。針に留められるという意味です。長射程のクイーン、ビショップ、ルークで相手の駒をピンにできます。
ピンによるタクティクスには二つのパターンがあります。
ピンされた駒を取る
ピンにされた駒は動けないので、さらに攻撃を受けると取られてしまいます。
今、黒のビショップは白ルークによりピンになっています。
ビショップがポーンで攻撃され、次に取られてしまいます。
ピンされた駒に守られた駒を取る
ピンにされた駒は動けないので、他の駒を守ることができません。
今度はc7のポーンがビショップにピンにされています。
b6のポーンが取られてしまいます。c7のポーンに守られていたはずですが、ピンにより無力化されていました。
フォーク
Fork
一度に二つ以上の相手の駒を狙うことで、どちらかを取ってしまうタクティクスがフォーク(両取り)です。ポーンからキングまで、あらゆる駒で可能ですが、実戦的にはナイト、ポーン、クイーンによるフォークが生じやすいと思います。
ナイトフォーク
チェスと言えばナイトフォーク!?と言えるほど最もポピュラーなタクティクスです。ナイトの動きはトリッキーなので見逃しやすいです。
ナイトの動きはまだ難しいですか?
Nf6でルークとの交換得になります。
ポーンフォーク
ポーンは最も価値が低い駒なので、このフォークが決まった瞬間に駒得が確定です。
一見黒の駒が脅威ですが、、、
g3でビショップとクイーンのフォークです。意外と見落としがちなので、気を付けて。
クイーンフォーク
クイーンによるフォークが他のフォークと違う点は、クイーンという駒の価値が非常に高い点です。つまり、交換ではなく、タダで相手の駒を取らねばなりません。
ただし、クイーンは移動範囲が大きい、強力な駒なので、意外性のある手でフォークが決まりやすいです。
クイーンは強力なので、2種類のフォークがあります。
一つ目はルークの動きとビショップの動きを組み合わせて、キングとルークを狙っています。
二つ目はビショップの動きでキングとルークを狙っています。
スキュアー(串刺し)
Skewer
ピンと対称関係にあるのがスキュアーです。スキュアーでは価値の高い駒を攻撃し、その背後の駒を取ってしまうタクティクスです。
オーバーローディング
Overloading
日本語としては過負荷という意味。一つの駒が二つ以上の駒(あるいはその他の弱点)を守っている場合に両方は守り切れないというタクティクスです。別のタクティクスと組み合わせて使うことも多いです。
黒のクイーンはe7のビショップとg7の白からのメイトの狙いを守っています。両方同時には守れません。
チェックメイトされてしまうので、e7のルークを取ることができません。
バックランク
Back rank
初心者向け講座でも扱った内容ですが、ポーンの初期配置の関係から、主にキャスリングしたキングにおいて下図のようなバックランクメイトの狙いが生じます。バックランクとは1段目のランク(横の列)のことです。
このバックランクメイトの狙いを利用して駒をタダ取りするようなタクティクスが生じます。例えば、下図のような場合です。
黒クイーンはルークに守られているようですが、バックランクの狙いがあるので、1. Qxd5に対して取り返すことができません。
このタクティクスは上で紹介したオーバーローディングの一種でもあります。バックランクの弱さを利用したタクティクスは大概がオーバーローディングの一種であるように思いますが、よく使われるモチーフなので、重要です。
組み合わせて使う(ことが多い)タクティクスのパターン
デコイ/ディフレクション
Decoy/Deflection
相手の駒の位置を変えて別のタクティクスを実現する手段です。デコイ(おとり)ともディフレクション(そらし)とも呼ばれ、特に区別されていません。
一見何もなさそうですが、
このように印をつければ分かるのでは?
青〇にナイトが移動できます。その際に青バツの位置に攻撃できます。
ルークをサクリファイスしてナイトフォークを実現します。
キングとクイーンのナイトフォークです。
デコイ/ディフレクションとナイトフォークの組み合わせでした。
ディスカバードアタック
Discovered attack
邪魔をしている味方の駒をどかすことで敵を攻撃するのがディスカバードアタックです。どかす駒で他の駒を攻撃することで、駒得などを狙います。
白ルークはビショップ越しに黒キングを狙っています。
黒クイーンが攻撃を受けていますが、黒キングにチェックが掛かっているので、クイーンを逃がすことができません。
ダブルチェック
Double chekck
一度に二つの駒でチェックを掛けることです。少し考えると分かりますが、ディスカバードアタックでしかダブルチェックは実現できないので、ディスカバードアタックの一種です。
ポイントは2種類のチェックを受けているので、相手キングが逃げなければならない点です。これを意識すると随分読みが省略できます。
白ビショップはルーク越しに黒キングを狙っています。ただチェックしても黒キングはg8のマスに逃げるだけに思えますが、、、
ルークをe8に移動することで、ダブルチェックでチェックメイトです。
Youtubeで学ぶ
この記事と似たような内容をYoutubeのチャンネルでも扱っています。そちらも参考にしてください。
さらに学びたい人は
タクティクスのモチーフはまだまだあります。もっと学びたいという人にはチェス戦術大全というモチーフを網羅したシリーズを用意しています。そちらも参照してください。
チェスコムのレッスン
また、Chess.comの教育コンテンツである「レッスン」でも基本的なタクティクスを学べます。
戦術で勝つ
高度な戦術
タクティクス系レッスンメモ
まとめ
本ブログでも様々な機会で「タクティクスは大事」だと言い続けてきました。最低限基本的なタクティクスが見えるように、紹介した戦術パターンを覚えましょう!きっと役に立つはずです。
Chess.comのタクティクストレーナーなどで練習するといいと思います。無料会員で1日3問、有料会員では無制限に問題を解くことができます。
コメント
そこまでタクティクスの重要度って高いか?
高くないですかね?この記事に書いてあるタクティクスが見えないと、実戦的にはかなり厳しいと思います。
将棋などで鍛えていて、元々タクティクスは見えるという方もいるので、感覚が違うかもしれません。