センターをめぐる攻防 ーチェス 序盤の基本ー

さて、チェスの序盤を扱ったチェスの基本シリーズも今回で3回目です。

基本的には序盤は

センターの重要性を意識してポーンやピースを展開し、キャスリングすればOKなんじゃないかと思います。しかし、センターをめぐる攻防に関しては、もう少し掘り下げてみた方がよいのではないかと思いました。

スポンサーリンク

センターをめぐる攻防(再考)

おさらい

センターの重要性の項で、センター付近では駒の可動範囲が大きく、そのため敵にセンターのマスを使わせないセンターの支配が重要になるという話をしました。

また、センターの支配のためにはd4とe4にポーンを配置し、それを維持することが必要になります。一方で、黒はそのセンターの支配を許さず、ポーンを突くことによって反撃します。その例として、下図のようなフレンチ ディフェンスの局面を挙げました。

上の局面でd4とe4のポーンを維持しようとした場合、f3を突くしかありません。しかし、これには3.dxe4 fxe4 4.Qh4+でまずいことになります(ポーンが落ちた上にキングが危ない)。

Eの視点
Eの視点

eポーンを守ろうとfポーンを突いて似たようなタクティクスをくらう棋譜を見たことないですか?なぜこんな手をさすのだろうと私自身思っていた時期もありましたが、センターの支配を維持しようという意図なんですよね。

そのため、白はセンターの支配の維持以外のアイデアで優位を保つ必要があります。この考え方は序盤定跡の考え方全般につながります。

スペースを取る

一つのアイデアがe5と突き越してスペースを取ることです。黒陣地の側にポーンが進んでおり、チェスにおいてはスペースを取っているととらえられます。

ここで、スペースを取ることとセンターの支配は似ているようで異なっていることを意識すべきです。

左の図がセンターを支配しているポーン配置で、右図がe5とスペースを取ったポーン配置です。

白のポーンが効いており、支配されているマスを赤×で示していますが、左図に比べて右図ではその数が減っており、×どうしの配置もバラバラです。

一方で、右図の青〇で示したマスは黒が利用することができ、なおかつ黒のポーンが効いているために白のピースはそのマスを利用することができない、つまり「支配されています」

次に白黒それぞれの立場からe5と突いたポジションを眺めたのが上図です。左が先ほどのポジション、右が白黒反転させたポジションです。

左図では、白が「支配されている」マスがある領域を黄色い両矢印で示しました。

右図では、黒が「支配されている」マスがある領域を黄色い両矢印で示しました。

左右の図で黄色い両矢印の位置が異なることがわかると思います。右図のほうが手前側にある。つまり、黒のほうが自陣に近いマスを支配されていることがわかります。これがまさにスペースを取ることの意味になります。

スペースを取られると自陣に近いマスを支配され、自由に駒を展開することができません。このことをスペースアドバンテージ(スペースを取ったことによる優勢)という言い方をします。

つまり、

ポーンを突き越す変化は、センターの支配という優位性から、スペースアドバンテージという別の優位性を取ることです。

ピースで守る

もう一つのパターンが、センターの支配の維持は放棄してピースをセンターに配置することを意図する変化です。

具体的にはNc3とe4のポーンをナイト守る手です(Nd2も有力な変化です)。守るといっても、黒はdxe4と取ることもできます。

上の図がdxe4、Nxe4と進んだ局面です。

ここで注目するべきポイントは二つ

ナイトで取り返したことで、ナイトがセンター付近に配置された

センターの重要性のところで、議論したように、センター付近はピースの働きが最も強力になる場所です。特にナイトは射程が短いため、より効果が高いです。

d5のポーンがいなくなったことで、c4とe4のマスが支配されなくなった

図で赤丸で示した部分の支配がなくなりました。白はピースの展開場所が増え、よりアクティブに展開できます。

このようなピースでポーンを取り返してセンターに配置するという考え方は様々な定跡で見られます。しかし、基本的には取り返すピースはナイトであり、ビショップではないことは理解しておきましょう。ビショップは射程が長く、センターに配置する効果が小さいのです。

Eの視点
Eの視点

センターに居座ることが推奨される駒はナイトとクイーンです。

ナイトは射程が短いために、相手陣地に近いセンターに居座ることで、影響力が大きくなります。

一方で、クイーンは序盤に動かすなと言われることもありますが、それは相手のピースで狙われて手損になりがちだからです。しかし、クイーンは非常に強力な駒なので、もし追い払われることなく中央に居座ることができれば、優位に立てます。

話を戻すと、黒からのポーン突きを放置してピースを展開する狙いは、ピースをよい位置に配置する狙いです。取り返すピースだけでなく、もともと黒に支配されていたマスを利用できるので、ピースのアクティビティが増します。つまり、

センターの支配という優位性から、ピースのアクティビティという別の優位性を取る

ことがピースで守る場合の考え方になります。

スポンサーリンク

まとめ

センターの重要性については色々なところで議論されているので、知っている人も多いように思いますが、誤解されている部分も多いと感じます。

ポーンによるセンターの支配とそれを維持することが理想だが、それは不可能で、スペースアドバンテージやピースのアクティビティといった現実的な優位性を志向するのがチェスの序盤であるということです。

また、ここで取り上げているようなことはあくまでも一般論で、実際にはポジションに応じて具体的に考えなければならないということはぜひ覚えておいてください。

今回でこの序盤のシリーズはいったん打ち止めにしようと思います。また何か思いつくことがあれば、記事にしたいと思います。

定跡が秘めた狙い

著:渡辺 暁
¥1,782 (2024/04/16 20:36時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

著:アーヴィング・チェルネフ, 翻訳:水野 優
¥1,540 (2024/04/17 01:09時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

関連記事

本記事で参考にした本の日本語訳が発売されています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました