これまで各ピースの特徴を元にその使い方を説明してきました。今回からは特定のピースとは関係ない戦略的な考え方について説明していこうと思います。今回はスペースアドバンテージについてです。
チェスにおけるスペースとは
まずはチェスにおいてスペースとは何かについて説明します。白黒それぞれのスペースはポーン構造が決めます。基本的には自分のポーンよりも自陣側が自分のスペースになります。このため、全体的にポーンを進めている側がスペースが広い、つまりスペースアドバンテージを取っていると言えます。
一般的に白番の方がスペースを取っていることが多く、チェスの中で最も頻繁に現れる優位性であると思います。
スペースアドバンテージ
では、なぜスペースが広い方がアドバンテージがあるのかと言えば、スペースが広い方がピースを配置する場所が多いからです。数を見ると、ポーンの内側でピースを配置する場所が黒4つに対して、白は8つあります(1段目は展開しているとは言えないので無視しています)。
このピースを配置する場所の数の違いは意外と重要です。ビショップとナイトが4つだから4マスあれば十分と思うかもしれませんが、問題が二つあります。
ピース同士が邪魔し合う
確かに、ピースを配置するだけならマスが4つあればいいという話になりますが、配置されているピース自体が別のピースの邪魔になることもあります。
上図の黒マスビショップとeファイルのルークを見ればその違いは明らかではないでしょうか。黒のルークはe7の黒マスビショップに、黒マスビショップはf6のナイトに行く手を遮られており、本来の力を発揮できていません。スペースが狭い側はこのような状況に陥りやすいのです。
ピースを動かす場所がない
似たような考え方ですが、マスの数が少なければ既に配置されているピースを動かす先のマスも少ないわけです。チェスの駒は初期配置から動かしたら終わりではありません。キングサイドからクイーンサイドに動かしたり、相手から狙われたポーンを守ったり、様々な要因で動かす必要が生じます。
このような際に動かす先の選択肢がないことが決定的な不利につながることもあります。
ポーンの外側のピース
もう一つの疑問点として、ピースをポーンの外側に展開すればいいじゃないかと思う方もいると思います。しかし、通常チェスの序盤においてピースはポーンの外側にはあまり展開しません。しても1つぐらいでしょう。理由は外側のピースは相手のポーンなどからの攻撃を受けやすいからです。序盤のうちはまずは駒の展開を急ぎ、攻めの準備ができてから相手陣に向かっていくのが基本です。
スペースアドバンテージに対する対策
スペースアドバンテージは、相手にそれを取られたら負けというような優位ではありません。分かりやすい対策もありますし、スペースアドバンテージだけで決定的な差になることは少ないと思います。
ポーンを突いてスペースを取る
まず分かりやすい考えがポーンを突くことです。ポーンの位置が高い方がスペースを取っているわけですから、ポーンを突けば味方側もスペースを取れます。ただし、ポーンを突くことはポーンの交換につながったりしますし、それほど簡単ではありません。
上図ではスペースで負けていた黒がc5と突きました。ポーン形は対称なので、スペースに関しては差がなくなりました。ただし、cxd5やdxc5などポーン交換後の局面が不利になっていないかポーンを突く前に気を付ける必要があります。
ピースを交換する
もう一つはピースの交換です。スペースが狭いことの問題点がピースの配置だったわけですから、そのピースの数を減らしてしまえばいいだろうという考え方です。
上図の局面は黒がナイトを動かしてh4とe7のビショップの交換を迫っています。また、動かしたナイトは次にc3のナイトを取ることができるので、黒は少なくとも1つの駒を交換することができます。
スペースを取ることのデメリット
スペースを取ることはメリットばかりではありません。特に駒の交換が進んだ終盤ではデメリットになることも多いです。
ポイントはスペースを取っている側のポーンが進んでいることです。ポーンが進んでいるということは敵陣に近いということで、相手からポーンを狙われやすく守りにくいのです。
弱いポーンについて解説した記事で説明したように最も後方にいるポーンは弱くなりがちです。上図では白の守られていないポーンを緑で、黒の守られていないポーンを赤でハイライトしました。
この弱いポーンを攻撃するために掛かる手数が白と黒で大きく違うことが分かると思います。突き過ぎたポーンはピースが減ってエンドゲームになれば弱点になります。
まとめ
本記事ではチェスにおけるスペースアドバンテージの意味について解説しました。スペースアドバンテージはチェスにおいて最も頻出する優位で、特に白番に生じやすいです。スペースアドバンテージの優位の理由を理解したうえで、駒交換やポーンブレイクによって対応できるようにしましょう。
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