ポーンの価値 ー基本のチェス戦略ー

本記事ではポーンを活用するための基本知識を説明しています。ポーンはチェスの駒の中で最も弱い駒ですが、このポーンをうまく活用できれば、優位にゲームを運べます。

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ポーン、最も価値が低い駒

ポーンはチェスの駒の中で最も価値が低い駒と考えられており、駒の価値を点数化する際の基準として、ポーンが1点とされています。

ポーンは弱いが役に立つ

しかし、この後の記事を見ていただけると分かりますが、ポーンは価値が低いからこそ逆説的に戦略的な価値が高いのです。序盤で見られる「ギャンビット」も、ポーンの価値が低いからこそ行える序盤戦略でしょう。

もちろん昇格の可能性は大事

ポーンは最も価値が低い駒だと言いましたが、ルール上プロモーション(昇格)できることは意識しておく必要はあります。特に、同じファイルや隣接するファイルに相手ポーンがいない場合にはポーンはパスポーンと呼ばれ、プロモーションの狙いがあるため強力です。パスポーンは終盤で特に重要ですが、中盤で相手を抑え込む道具としても使われます。

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ポーンによる支配

ポーンは価値が低いため、ポーンの攻撃範囲(斜め前の2マス)にポーン以外のピースを配置することが基本的にできません。つまり、敵の移動範囲を制限しています。このように相手ピースの移動範囲を制限することをチェスでは「支配」と呼んでいます。

基本的に、価値の低い相手駒の攻撃範囲により価値の高い駒を配置することができないので、最も価値が低い駒であるポーンが、最もコスパよく支配できるのです。

ポーンによる支配の例として、センターの支配ナイトのマスを奪うビショップのダイアゴナルを塞ぐなどが挙げられます。

センターの支配

「支配」という概念のうち、最も有名なものがセンターの支配という序盤での考え方です。別記事で扱っていますが、ピースをセンター付近に配置することが最もピースの移動範囲が大きくなるため、センターに自分のポーンを配置することで「支配」を目指すのが、序盤の基本の一つです。

ナイトのマスを奪う

ナイトについては別記事で解説する予定ですが、ナイトは射程が短いので、効果的なマスに配置し、あまり動かさずにおきたいピースです。この効果的なマスをポーンで支配することで奪うことがポイントになります。

もちろん、すべてのマスを抑えるわけにはいかないので、自陣に比較的近くて居座られると困るマスを中心に支配するイメージです。

上図はルイロペスの局面ですが、白のNf5への侵入の狙いに対して、黒はg6と突いてf5のマスを守りました。ポーンを突いたことによってh6のマスの守りがなくなっていることも意識しておく必要があります。

この局面もナイトの侵入を防いだ例です。白がf4のマスを守るためにg3と突いています。

ビショップのダイアゴナルを塞ぐ

相手のビショップと同じ色のマスでつながっているポーン(ポーンチェインと呼ばれ、別記事で扱います)は相手ビショップの動きを制限します。

上図の局面では、黒はビショップをフィアンケットしており、黒のポーンもビショップとは異なる色のマスにいるため、黒ビショップはグッドビショップのはずです。しかし、白のポーンが黒マスに固まっており、黒ビショップの移動範囲を制限しています。

ポーンの弱さ、マスの弱さ

上記の支配の概念ともつながっていることですが、チェスではポーンの(防御力の)弱さやマスの弱さもポーンの配置に関係しています。

ポーンで守れる可能性があるか

弱いポーンや弱いマスは何かといえば、ポーンで守れる可能性がないポーンやマスのことです。そのようなポーンは隣接するポーンがない場合最も後方にいるポーンである場合が多いです。以下でそのことについて説明します。

ポーンはそのポーンの斜め前のポーンを守るということを考えれば理解できます。

隣接するファイルにポーンがいなければそのポーンをポーンで守れません。

一方で、隣接したファイルにポーンがいても最も後方にいるポーンはポーンで守れません

弱いポーンの前のマスも弱い

ちなみに、弱いポーンを守るポーンがいないということは、弱いポーンの一つ前のマスを守るポーンもいないということです。

つまり、弱いポーンを抱えることは、同時に弱いマスを抱えることでもあるわけです。とても重要なことですから意識しておきましょう。

また、「ポーンで守れる可能性がない」という点が重要で、現時点で守られていなくてもポーンを動かすことで守ることができるようになれば、弱いポーンやマスではありません。

上図の局面で赤色でマークしているように、白はa2、e3、h2に弱いポーンを抱えています。このため、a3、e4、h3が弱いマスになっています。一方で、緑色でマークした黒のポーンは黒ポーンの中で最も後方に配置されていますが、どちらかのポーンを進めることで守ることができるので、弱いポーンとはみなされません。

しかし、いったんどちらかのポーンを進めてしまえば、進めなかった方のポーン(必然的に後方のポーンになります)が弱くなることは意識しておきましょう。

弱点とはポーンである

戦略的な考えをする上で、相手の弱点はどこかを考えることが基本の一つになります。チェスにおいて、相手の弱点は弱いポーンです。厳密にはやや言い過ぎな部分もありますが、原則的には弱いポーンが相手の弱点なのです。そう聞くと、ポーンの重要性が分かるのではないでしょうか?

まとめ

  • ポーンは価値が低いからこそ役に立つ
  • ポーンはコスパ最強な支配者
  • 弱点もポーンが決める

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ポーンに関して解説した専門本も出版されています。

The Power of Pawns: Chess Structure Fundamentals for Post-beginners

ポーンの力 (チェス・クラシックス 12)

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