今回はクイーンズギャンビットを見て「チェス」というよりも「チェスというモチーフ」に興味を持った方向けにチェスプレイヤーを取り扱った映画を二つ紹介します。
ボビー・フィッシャーを探して
実在の天才チェス少年ジョシュ・ウェイツキンの幼少期を描いた映画です。
クイーンズギャンビットのベスとは異なり、普通の家庭で幸せそうに育てられており、戦いの舞台も世界ではなく真剣にチェスに打ち込む少年達との戦いです。その分、私のようなトーナメントプレイヤーから見るととてもリアルな雰囲気を感じさせます。
簡単なあらすじ
ある日、自分の息子の才能に気が付いたジョシュの父親は彼をブルースパンドルフィーニの元に連れていき、コーチを頼みます。ジョシュはすぐに頭角を現し、ジュニアの大会で結果を出し始めますが、ジョシュ本人よりも父親の方が熱くなっていきます。
様々なプレッシャーにより、スランプに陥ってしまうジョシュ。一度はチェスをやめかけますが、最後は周りの助けもあり復活します。
私の評価
典型的な少年の成長物語で、天才少年ではありますが、ベスのような超人的な強さではありません。その分リアリティを感じさせ、心温まるよい話だと思います。
しかし、この映画のクライマックスにジョシュが試合中にある行動をします。私は、チェスプレイヤーとしてこれはあり得ないと思いました。ネタバレになるので言及はしませんが、皆さんもご自身の目で見て判断してください。
余談ですが、たまにこの映画のタイトルのことを失踪中のボビー・フィッシャーを探すという意味にとらえている方がいるみたいなんですが、これは「次の」ボビー・フィッシャーを探すという意味ですよ。主人公のジョシュ・ウェイツキンが次代のボビー・フィッシャー候補という意味だと少なくとも私は解釈しています。アメリカはボビー・フィッシャー以降、世界的なプレイヤーを長らく輩出していなかった(現在はヒカル・ナカムラやその他チェス籍を変えたトッププレイヤーがいますが)ので、次代のボビー・フィッシャーを探し続けているという意味合いだと思います。ま、このジョシュ・ウェイツキン、IMは取得したもののGMにはなれず(ならず?)にチェスをやめてしまい、中国拳法家になりました。チェスも格闘技も身に付けられたということで、習得への情熱―チェスから武術へ―なんて本も出してます。いや、確かにすごいですけどね。
愛のエチュード
こちらは対照的に世界チャンピオンに挑む天才チェスプレイヤーの話になります。原作はチェス好きで知られるロシアの文豪ナボコフ。
簡単なあらすじ
かなり昔に観た映画なので、記憶があやふやな部分もあります。
主人公の天才チェスプレイヤーは、もちろん変な人です。
皆さんの期待を裏切らない「いわゆる天才」のチェスプレイヤー、ルージンが美しいロシア人女性ナターリアと恋に落ち、彼女の助けもあり世界選手権の決勝まで勝ち進むのだが、、、
私の評価
ストーリーの詳細を忘れている部分もあるのですが、ハッピーエンドではなく、ひどい策略があった記憶があります。チェスの天才=変人=精神を病むという定型な構図には不満がありましたが、途中の恋路のほほえましい感じは割と好きでした。
まとめ
個人的な意見ですが、「クイーンズギャンビット」は変人天才少女の成長物語と見せかけつつ、割と真人間で(他人に気を使えるいい子)、成長するまでもなくひたすら強い(メンタルさえ大丈夫なら全く問題ない)という印象でした。その意味で言うと、成長物語を楽しむなら「ボビー・フィッシャーを探して」、天才ならではの苦しみに興味があるならば「愛のエチュード」という選択になるでしょうか。
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