Training for the Tournament Player その4


 第4章は古典を勉強する、です。


 古典と言っても著者はシュタイニッツ以降だと述べています。シュタイニッツが初めてチェスを理論化したのだということです。アンデルセンやモーフィーが天才であるにしてもシュタイニッツのようにはっきりした方法論を持って指していない。その方法と言うのは、まずポジションを評価し、その評価に応じてどのように指すのかプランを立てるということです。


 この話を聞いて思い出したのが柔道の創始者 嘉納治五郎の話です。彼は実は東京帝国大学(今の東京大学)卒のいわばエリートで、まあお約束どおり体は貧弱でしたので鍛えるために柔術を始めたそうです。そして毎日師匠やら何やらに投げられているうちにふとなぜだろうと思うようになりました。要するに相手を見事に投げることの出来る達人とそうでない人との違いは何だろう、ということです。そして至った結論が彼らは技をかける前に相手を崩しているということでした。当たり前のようですが、当時はそのような意識はなく、達人と呼ばれる人たちは無意識のうちに相手を崩して技に入っていたということです。19世紀後半から20世紀前半というのはこういう風にあらゆるものが理論化体系化されてきた時代なんだなと改めて感じられる。といっても方法論が確立されたとしてもそれを体現できるのはやっぱり才能がある人達なんだとは思うんですけどね。


 話がそれてしまいましたが、著者はシュタイニッツの理論がよく解説されている本としてLasker’s Manual of Chess、Euwe’s Course of Chess Lectures、The Middle Game in Chess by Eugene Aleksandrovich Znosko-Borovskyの3冊を挙げている。しかし、この3冊のうちまともに手に入るのはLaskerの本だけで、しかも棋譜の表記が古いんだよなあ…
 また、シュタイニッツの理論はシュタイニッツ自身のゲームよりもRubinsteinから学ぶとよいとも書いてある。そこで紹介されている本はAmazon.comで探しても見つからないのでほっとおくとしてもRubinsteinの棋譜集も表記が古いので悩ましい。
 そしてシュタイニッツの理論の欠点についても述べています。シュタイニッツの理論は静的なポジションに関する理論であって、ダイナミックなポジションでは成立しない、あるいはそのような要素を考えていない。
 次にハイパーモダンを話題にしていますが、具体的に何を勉強すべきかと言う話は出てきませでした。


 古典の勉強の最後に、CapablancaとAlekhineを勉強するように書いてありました。CapablancaとAlekhineは同時代のプレイヤーと比べて飛びぬけて優れているので対戦相手は二人のプランに気づくことができず、二人のプランは何の障害もなくそのままの形で実現されているので、プランを分かりやすい形で学ぶことが出来る、ということが著者たちの言うところの理由です。

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