エンドゲームの勉強とは何かを教えてくれる本

今回紹介するのはちょっと変わったエンドゲームの本です。

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Amature to IM

Amateur to Im: Proven Ideas and Training Methods

今回紹介する本は英国のIM(執筆当時、その後GMになる)Jonathan Hawkinsの”Amateur to IM“です。アマチュアレベルのプレイヤーであった著者がIMレベルになるまでに主に行ったこと ーエンドゲームの勉強ー を元に書かれた本になります。つまり、エンドゲームの本なわけです。

通常エンドゲームの本といえば2種類に分かれます。

最も一般的なのは、既に証明されたエンドゲームの事実を網羅、あるいは必須事項のみを抜粋している本です。エンドゲームセオリーと言われるでしょうか。もう一方はエンドゲームにおける一般的な考え方を解説した本で、Mikhail ShereshevskyのEndgame Strategyがその先駆けと考えられています。

翻って、この”Amateur to IM“ですが、どちらにも属していると言えるし、どちらでもないと言える個性的なエンドゲームの本ではないかと思います。

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扱われている内容

Part 1は”Thinking Techniques”と題されており、エンドゲームストラテジー的な内容と基礎的なエンドゲーム(オポジションなど)の知識が扱われています。Part 2以降の準備と言えるでしょう。

Part 2は”Principles and Essential Theory”ということで、ルークエンディング、ルーク VS ビショップ、同色ビショップ、異色ビショップなどのエンドゲームが扱われています。どの章でも単にセオリーを扱うのではなく、少しずつピース配置を変えた局面を考えながら理解を深める内容になっています。

Part 3は”Endgame Explorations”と題されており、さらに発展的な内容について扱っています。

網羅的な本ではないことには注意

この本はエンドゲームのセオリーについて重要な事柄を様々に扱っています。しかし、網羅的に扱っているわけではないことには注意が必要です。この本だけでエンドゲームをマスターすることはできません

エンドゲームとは何か

真面目な人ほどエンドゲームの本から読み始める傾向にある印象があります。エンドゲームは確立された知識なので、それを網羅すれば事足りるから先に勉強しておけばいいと思う人が多いからではないかと思います。

確かに、答えが証明されていることが最も多いのはエンドゲームだと思います。また、チェスは相手キングをチェックメイトすることが目的であり、エンドゲームが最もチェックメイトへに近いフェーズになっていることが多いです。しかし、実践でエンドゲームを指し間違えて、「忘れてた、また勉強しないと」などと考えている人は何らかの落とし穴にはまっている気がします

この本の中のある箇所で下の図の局面を見せて著者は以下のように語っています。

白はf4と突いてからe4としてポーンを交換するプランではどうやら勝てそうにもないことが分かってきた(100%確信しているわけではないけれども

Amateur to IM Part3より

当然ながら、著者は執筆にあたってエンジンによる解析をしているはずですが、それでも100%の確信を持っているわけではないということです。上図の局面は、エンドゲームセオリーと言ってもいいぐらいの単純な局面ですが、それでも確信できない=答えが出ていないのです。

ここが一つのヒントではないかと思っています。エンドゲームのセオリーは覚えるべき英単語とは違うのです。答えが出ているセオリーですらその中に難しさがありますし、比較的単純なポジションですら答えが出ていない(出すのが難しい)のです。

そのようなことを再確認させてくれる本ではないかと思います。

まとめ

本記事では一風変わったエンドゲームの本を紹介しました。エンドゲームの本当の難しさに触れることができる内容で、私自身とても楽しめたのでおすすめです。

ただ、書評でも書いた通り、エンドゲームセオリーに関して網羅的に扱っているわけではないので、そこは注意が必要です。これ一冊でエンドゲームはバッチリ!ということではないので、別の本と組み合わせることが重要かと思います。

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