優れたチェス考証を素直に高評価【チェス小説書評】

チェスを題材にした小説がポプラ社小説新人賞を取り、単行本が発売された上にショートムービーが作成され、映画化を意識されているように思え、界隈がざわついています。あづみさんが買ってくれたので、私も読んでみました。

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エヴァーグリーン・ゲーム

エヴァーグリーン・ゲーム 石井 仁蔵 (著)

その小説というのがエヴァーグリーン・ゲームです。タイトルは19世紀の名プレイヤー、アンデルセンによる名局に由来します。私のブログでも以前紹介しています。

とはいえ、小説自体はアンデルセンともエヴァーグリーンゲームとも直接は関係ありません。あくまでもタイトルとして用いただけです。

優れたチェス考証

この小説で私が最も印象に残ったのはチェス考証(という言葉があるか知りませんが)の正しさと自然さです。「チェス」というボードゲームを扱う以上、そのゲームの特徴や名言、エピソードなどを物語に練り込んでいくことが自然だと思います。実際、今までチェスを扱った小説や漫画などがいくつかありましたが、それぞれにチェスというものを物語に取り込もうとしていたと思います。

ただ、それらの作品を読んでいて、少し違うなと違和感を感じたり、無理やりエピソードを入れているなと不自然さ(ダサさ?)を感じることが多かったです。

このエヴァーグリーンゲームでは、個性的なキャラクターを複数用意したためか、これでもかとチェス成分を注入しており、あまりにてんこ盛りで心配になるぐらいでしたが、嫌な感じはしませんでした(ただ、チェス知らない人は何言っているのか分からないというシーンも多かったような)。

この小説のチェス監修にはIMの小島慎也さんが入っており、当然知識としての間違いがないのは分かります。しかし、それよりもこれだけチェスについて書いていながら、物語に自然に溶け込んでいることがすごいと思いました、著者の筆力を感じさせます。

理想化された世界でエンタメを愉しむ

この小説の中では日本人GMが存在しており、ロシアのプーチンは失脚しています。小説の展開やラストを含めて、少々理想化され過ぎた世界を描いているように思えます。しかし、私はそこに著者の思いをむしろ感じました(特に、敢えてロシアの独裁者が失脚したことを話の本筋とは関係なく入れてきた点に)。

何より、この小説はエンタメ小説です。理想化された世界でエンタメを愉しむべきでしょう。

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まとめ

いちチェスプレイヤーの視点から見ても、非常に上手に(チェスが)構成された作品であると思いました。これまで読んできた国内外のマンガや小説の中でもかなりレベルが高いと感じます。天邪鬼的に考えるなら、病気とか目が不自由とか孤児とかちょっとキャラクターを集め過ぎなんじゃないっていう気がしなくもありませんが、まぁ、エンタメ小説ですから。

また、物語は全体としてコンパクトにまとまっており、映画化向きの内容であるとも感じました。映画化が実現してくれると、チェス界隈としてもありがたいですよね。

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