さて、2024年はチェスオリンピアードの年です。今年はハンガリーのブダペストで行われます。私も仕事を休んであづみさんのサポート(?)をする予定です!とはいえ、ハンガリー?チェス盛んだっけ?みたいな人もいるかもしれません。今回のコラムではハンガリーとチェスについて、私の知る限りの情報を書いていきたいと思います。
Polgar姉妹
ハンガリーでチェスと言えば、やはりポルガー姉妹でしょう。有名な3姉妹の女性グランドマスターです。特にJuditは歴史上最強の女性チェスプレイヤーとして知られ、全盛期には世界ランキングでベスト10に入っています。
こう聞くと、単にすごい3姉妹がいたんですね、と思うかもしれません。しかし、この話が興味深いのは、彼女たちの父親であるLászló Polgárが、「天才は作れるのか」というテーマを持って3人を育てたことです。また、男女で知的活動では差異がないはずだと主張し、姉妹たちは女性限定のトーナメントに参加させないと主張するなど(なんだかんだ色々出ていますが)、かなり主張の強いお父さんだったようです。
Peter Leko
2つ目は世界チャンピオン戦の挑戦者となったPeter Lekoを挙げておこうと思います。
Peter Lekoは当然ながら若くしてグランドマスターになった天才児ですが、上記のJudit Polgarが持っていた当時の最年少記録を更新し、14歳4か月22日でグランドマスターになっています。
世界チャンピオン戦としては2004年にKramnikに挑戦しています。この世界戦はまだFIDE主催の世界チャンピオンとClassical World Chess Championが分裂しており、歴史上どのように扱われているのかは私も確信がありません。このあたりのことは私の別のコラムも参照ください。
一方で、この世界戦でLekoは世界戦史上に残る接戦を繰り広げています。Lekoは最終戦まで1勝リードしており、最終戦に負けて世界チャンピオンを逃します。挑戦者が最も世界チャンピオンに近付いたマッチの一つでしょう。
この世界戦で最も有名なゲームはおそらくLekoがリードを奪ったGame8です。Kramnikが黒のマーシャルアタックを受けたのですが、事前の準備で白問題ないとしていた局面で見落としがありました。当時から強いコンピュータを用いた準備をしていたはずですが、黒のキングサイドアタックを見逃していたのです。
その局面が上図です。この局面、白のルークVS黒クイーンですが、a6のパスポーンが強く、白十分というのがKramnikチームの結論でした。
ところが、このポジションで自然なa7は7手メイト(将棋で言うと14手詰め)で、白負けでした。エンジンも使って準備しているのにこの結果、色々と教訓を教えてくれるマッチになりました。
また、現在Lekoはチェスのコメンテーターとして活躍しており、最近Chess.comに吸収されたChess24の解説者としてその甲高い声を披露しています(え、Lekoってこんな声なのと私は思いました)。
First Saturday
最後にFirst Saturdayを紹介しておきます。ハンガリーでは毎月第一土曜日に始まるトーナメントが開催されています。名前はそのまんまFirst Saturdayです。
このFirst Saturdayトーナメントがなぜ有名かと言えば、このトーナメントがIMやGMのノルムを取ることに特化したトーナメントだからです。IMやGMのノルムにはいろいろと条件があるのですが、このFirst Saturadayで好成績を取れば必ずノルムが取れることが保証されています。ノルムトーナメントというような言われ方もします。
このため、ノルムを取って称号を得たいプレイヤーが世界中から集まってきます。今、IMの小島慎也さんもハンガリーに留学(?)し、IMノルムを取っています。
また、最近FMになった大塚さんも確かこのFirst Saturdayに何度か参加しています。
まとめ
今回は2024年9月に行われるチェスオリンピアードの開催地にちなんで、ハンガリーとチェスについて記事にしてみました。
徐々にオリンピアードが近づいてきており、参加するわけでもない私まで緊張感が高まってきました。大会中は現地から楽しい記事を更新したいと思っています!乞うご期待!
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