今回紹介するのはブタペストギャンビットです。以前は国内でよく指されていたイメージですが、最近はめっきり見なくなった気がします。
ブタペストギャンビット
Budapest Gambit
1.d4 Nf6 2. c4 e5!?
知らない人からするとぎょっとするe5突きがブタペストギャンビットの特徴です。黒はdxe5とポーンを取られた上に、f6のナイトが攻撃を受けるため、１テンポ失います。これだけ聞けば黒は相当悪いのだろうと思うでしょうが、意外と悪くないのが興味深いです。
ブタペストギャンビットの特徴
2. Nf3の手順では指せない
一つ重要な要素は、ブタペストギャンビットは1.d4 Nf6 2.c4の手順でなければ指せないということです。2.Nf3とされてしまえば、e5のマスが守られているので、e5が突けません。
ポーンは概ね取り返せる
ブタペストギャンビットはギャンビットと名乗ってはいますが、ポーン自体は取り返せることが多いのが特徴です。少なくとも、白がポーンを維持しようとする変化は有力な変化と考えられていません。
e5のポーンを取られた後に図のようにNg4と飛ぶのがポイントで、e5のポーンを攻撃しています。
最終的には二つのナイトとクイーンの攻撃を受け、e5のポーンは落ちてしまいます。
黒のピース配置はやや不自然
e5なんて突かれた上に、ポーンも取り返されるようでは白面白くないと思う人がいるかもしれません。私も昔ブタペストギャンビットにおける白の優位点がいまいちわからなかった時期があります。しかし、黒はポーンを取り返すためにピースを配置しているため、ポーンを取り返した後にはピース配置がやや不自然になることが多いです。チェスにおいては駒得した直後に相手に主導権を握られることが多いと思いますが、それも同じ理屈でしょう。ポーンを取り返せるから問題ないというわけでもないのです。
aファイルからのルークリフト
前項で黒のピース配置に難があると書きましたが、それを打開するアイデアとして黒からのルークリフトがブタペストギャンビットでは有名です。
上図が典型的です。黒はa8のルークを一気にキングサイドに展開し、白キングを攻撃しようとしています。このルークリフトはb6やd6を突くと実現できないので、白マスビショップの展開が遅れるというリスクもあります。
ブタペストギャンビットの手順
ブタペストギャンビットはNg4に対してどのようにe5のポーンを守るのかが一番の分かれ道です。
4. Nf3
Nf3と守る手がとても自然に見えますが、黒にはBc5とf2を攻撃する手があり、白はe3を強制されてしまいます。
こうなると白の黒マスビショップはポーンチェインの外側に出ることができませんし、Bf4とe5を守る手が指せません。このため、白はBb2とビショップを展開することを目指すことになります。
この後の展開は、例えば、5. e3 Nc6 6. Be2 0-0 7. 0-0 Nxe5 8. Nxe5 Nxe5 9. Nc6 Re8 10. b3のような変化が考えられます。
4. Bf4
白はBf4から入ることで、e5のポーンを少し長く守ることができますが、基本的にはポーンは落ちます。
4.. Nc6 5. Nf3 Bb4+ 6. Nbd2
Bb4+が一つポイントなる手で、白はよりアクティブなc3の位置にナイトを配置できません（Nc3にはBxc3とポーン構造を崩されるため、ただしそれも定跡手順ではある）。
この後はクイーンも使ってe5のポーンを狙うことで、ポーンを取り返すことができます。
4. e4
ポーンを守るのではなく、展開を優先するのが4. e4です。ナイトが狙われているため、黒はNxe5と取りますが、f4とさらに追われます。黒のピースは不自然な配置になりますが、白のポーンもやや伸ばし過ぎている印象で、そこが黒にとっての狙いどころになるでしょう。
チェスコムで学ぶ
チェスコム公式以外にもスパイシーGMことSimons Williamsのレッスンもあります。
まとめ
今回は対d4のトリッキーな対策であるブタペストギャンビットを紹介しました。こんなの絶対黒が悪いはずだ！と思うかもしれませんが、意外と手堅いので、無理せずやや良いポジションを維持することが白としてのコツだと思っています。
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