今回紹介する本:終盤の基礎知識
今回紹介するのは、チェス・クラシックシリーズの4巻、「終盤の基礎知識」です。原作者のアヴェルバッハは著名な棋士で、終盤の研究家として有名です。また、キングズインディアンディフェンスの一変化にその名前を残しています。
この本の特徴
初心者から中級者まで使える
専門書などで「基礎」などと書いてあるとものすごい難解な教科書であることが多く、警戒することも多いのですが、この本は間違いなく初心者から読める本になっています。クイーンやルーク(とキング)によるチェックメイトといった基礎的な事項から扱っています。もちろん、このあたりのことはわかっているという人は飛ばしてしまって構わないと思います。
網羅的に扱っている
日本語でエンドゲームを扱っている本と言えば「渡辺暁のチェス講義」がありますが、チェス講義はエンドゲーム専門の本ではないので、網羅的には扱っておらず、実戦で重要なエンドゲームを抜粋して解説しています。
「終盤の基礎知識」では、
- ピースとキングによるチェックメイトの仕方
- 各ピースによるパスポーンの止め方
- 1ポーンアップのエンドゲームの戦い方
といった基礎的なエンドゲームの知識を一通り網羅しています。
気になった点
終盤の基礎知識は初心者から読むことができて、終盤の知識をかなり網羅した好著だと思います。しかし、いくつか気になる点も個人的にはあります。
網羅性はもちろん完璧ではない
終盤の基礎知識は初心者でも読める「網羅的な」エンドゲームの本です。ただし、初心者でも読めるわけですから当然紹介しきれない部分が出てくるのは仕方がありません。
個人的に気になったのはルーク+ビショップ(またはナイト)VSルークのエンドゲームがないことでしょうか。私の経験でもビショップ、ナイトそれぞれ1回ずつ実戦で現れたことがあります。比較的重要度が高いエンドゲームだと思います。
最も、この本の内容以上の知識を必要とするプレイヤーはかなりの上級者で、そのような人には洋書のエンドゲームの名著がありますので、そちらで勉強すればいいと思います。
訳語の問題
翻訳時に訳語をどうするかというのは悩ましい問題(だと思うの)で、あまり細かいことはいいたくないのですが、どうしても気になったのが「要マス」という訳語です。これはkey squareの翻訳だと思うのですが、気になりました。
また、これは「チェス戦略大全」でも出てきますが、「両翼」という訳語もついでに気になりました。最近はサッカー中継の影響で、両サイド、逆サイドなどの言い方が日本語でも一般的なので「サイド」という日本語を使ってもいいと思いました。
なぜ気になってしまうのか考えたのですが、どちらも「直訳ではない」上に「語呂がよくない」という点が大きいのかなと思いました。直訳ではないと日本語から英語に移行した際に勘違いしやすいですし、語呂がよくないと会話で使いずらい(使わない)です。ま、好みの問題もありますし、個人的な意見として受け取ってください。
まとめ
今回はチェスクラシックシリーズの「終盤の基礎知識」を紹介しました。日本語でエンドゲームの知識を網羅している唯一の本で、原著者もしっかりしていますし、信頼ができると思います。この本だけでは十分ではない部分ももちろんありますが、大部分の日本のチェスプレイヤーにとっては必要十分な内容かと思います。
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