My memorable games 1 ーはじめの一歩ー 棋譜解説

2002年の夏、初めての公式戦に参加しました。初日を望外の結果で終えた二日目の最初のラウンドです。

白: Enju (UR)
黒: Mits (1568)
Kasiwa Open 2002 (4)

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5

グリュンフェルドディフェンスです。このころの白番はどこかの本で読んだ手順を見よう見まねで指していました。

4. cxd5 Nxd5 5. e4 Nxc3 6. bxc3 Bg7 7. Bc4 c5

ここまで適当という割には定跡どおり指していますが、このあたりからボロが出始めます。

8. Qb3!?

ここで安易な手が出ます。f7のポーンはキャスリングで簡単に守れますし、そのあとd4をどう守るか考えなければなりません。

8… O-O 9. d5

ここでc3のポーンをクイーンで守っていることが効いています。そこまで考えて当時指していたかは覚えていませんが、、、

9… b6

黒はBa6からビショップを交換する狙いです。典型的な手ではありますが、手数が掛かり、白に余裕を与えた気がします。

10. Ne2 Ba6 11. O-O Bxc4 12. Qxc4

こうして交換が進んでみると、白マスビショップは白にとってバッドビショップですし、白にとって悪い交換ではありませんでした。とはいえ、白がよいというわけでもなくバランスが取れた局面であると思います。黒はここからの対応がよくありませんでした。

12… Nd7 13. Bg5

このピンがこの後意外と煩わしく効いてきました。

13… Re8

結果的には、このルークの動きも無駄だった気がします。

14. Rad1 Ne5 15. Qb3 Qd6 16. c4

黒には有効なオープンファイルがなく、スペースも狭いです。早めにセンターまたはクイーンサイドから反撃するべきだったと思います。

16… Rad8?

ここではっきりと悪い手が出ました。e7のポーンを自らピンにしています。このルークはクイーンサイドからの反撃に使うべきだったと思います。

17. f4 Nd7 18. e5 Qb8 19. d6

ポーンで押し込まれた上にe7のポーンのピンを利用されてしまいました。黒にとってかなり苦しい局面です。


19… f6 20. dxe7 Rxe7 21. Bh4 Rde8

f6とピンの解消を意図した黒に対して、白はポーンを一つ交換して今度はf6のポーンがピンになるようにうまく残しました。しかし、私はここで少し困ってしまいました。黒は困ってはいますが、白がこの後どのように局面を進めていくかは自明ではありません。

しかし、この後自分でも驚くような冴えを見せていきます。まずはチェスの戦略の基本です。白のピースの中で唯一攻めに効いていない駒はどれでしょうか。その駒を働かせます。

22. Ng3!

もちろん、e2のナイトが働いていませんでした。このナイトはe4を経由してd6やf6を狙います。本当は同じ狙いのNc3の方がより良い手だったようですが、初めての公式戦でこんな手が指せたのだから好手でよいでしょう。

22… Qc7 23. Ne4 Re6 24. Nd6 Rf8

さて、Nd6の狙いを実現しました。しかし、またここで手が止まります。局面を進展させる手が見つけられません。黒のポジションは不安定ですが、まだ白は駒得をしたわけでもありません。

おそらく、次の一手はこの試合、いやこのトーナメントの中で最も難しい手でした。考えてみてください。



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25. Qd3!

黒のポジションの弱点はe6のルーク、2手かけてそのルークを狙うd5に移動するQd3が好手でした。2手かけるわけですから、黒に有効な反撃がないことも見切らなければなりません。

25… Rd8

f8をナイトのために空けて、必死のディフェンスです。

26. Qd5 Nf8

黒は何とか守れているようですが、決め手があります。ここも考えてみてください。



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27. f5!

このポーンブレイクで黒陣が瓦解します。いや、自分で言うのもなんだが、強過ぎでしょう。とてもURのチェスではない。

27… gxf5 28. Rxf5 Kh8 29. Bxf6 Bxf6 30. Rxf6 Rxf6 31. exf6

駒交換が進み、優勢がはっきりします。まずはNf7+のナイトフォークへの対応が必要です。

31… Rd7

Nf7を防ぎます。

32. f7

Qe5+がメイトの狙いになっています。

32… h6 33. Qe5+ Kh7 34. Qg3 Ng6?

ここで黒が力尽きます。

Qxg6+からf8=Qが止まりません。おそらく今の自分であれば時間がない中でもこの手を見つけられたのではないかと思います。チェス始めた初期のころの私はタクティカルな能力に問題を抱えていました。

35. h4? Rxf7

あれ?黒あきらめたのかな、とこの時思っていた気がします。

36. Nxf7???

どこに出しても恥ずかしくないブランダーである。

36… Qxg3

もちろん、ほげ?ってなりましたよ。いや、ほんとに。

37. Rd7 Nxh4 38. Nd6+ Kg6

ここで投了しました。

0-1

脱力の終局でした。途中まで素晴らしい指し回しをしていた自覚があったため、呆然としてしまいました。

この後、この日の対局は1勝2敗、初日の2勝1敗と合わせて3ptでUR(レーティングがない人)で優勝しました。この結果を元に計算された仮レーティングが1749で、自分の期待をはるかに上回る出来でした。

この頃はちょっと頑張ればレート2000ぐらい行くんじゃないかとか甘いことを考えていました。まさか10年近くかかることになるとは、、、この頃は思いもしていませんでした。それどころかここから数年間、伸び悩む時期を経験することになります。

それはまた別のお話で、、、

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