Japan League 5R


馬場君のリクエスト(?)通り、ジャパンリーグ のゲームを載せようと思います。まずは、5Rのポール飯沼さんとのゲームから。
ここまで、1Rで南條君にいいところなく敗れ、2R、3Rは格下の相手に2連勝、4R byeでようやく
また上位との対戦にこぎ着けました。ここでポイントを取らなければ、上を目指せない勝負所です。


□ Sakai, Enju (1975)
■ Iinuma, Paul (2213)

Japan League 2009 (5)



 1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7
King’s Indian Defenseになります。このブログの読者ならば、僕の黒でのメイン定石であることをご存じだと思いますが、白で相対するのは嫌なものです。対策を立てれば立てるほど、矛盾の故事が連想されます。
4. e4 d6 5. Nf3 O-O
6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7 9. b4


僕が準備していたのはbayonet attack
90年代にKramnikが用いたことで、メジャーになり今でもトップレベルでポピュラーな変化です。

9. … Nh5 10. Re1
この手がこの変化がメジャーになったポイントです。 
10. … f5 11. Ng5



このナイトの飛び込みがbayonet attackの特色です。
このナイトはさらにe6に飛び込んでビショップとの交換になります。e6に不安定なポーンが残る形になりますが、これを取りに行くのは見た目ほど楽ではありません。
11. … Nf6
11. … Nf4と出る方がactiveに見えますが、12. Bf1とビショップによけられると、このナイトがあまり効果的に働きません。これが10. Re1の意味するところです。
12. Bf3 c6 13. Bb2

 
ここでは、13. Be3や13. Qb3等があります。おそらくBe3が一番メジャーな変化でしょうが、このBb2はShirovとラジャボフのゲームで有名になりました。ただし、これ以降トップGMが指していないところを見ると、それほど白が有力というわけではないのでしょう。
そうは言っても、素人レベルでは十分危険な変化であることが、この後の展開を見れば分かってもらえることと思います。
13. … h6
白は黒がこのキングサイドを弱める手を指すまでNe6を温存していました。
14. Ne6 Bxe6 15. dxe6 fxe4 16. Nxe4 Nxe4
黒はここでNf5とすることで本譜の変化を避けることが出来ました。
実際、Play the King’s Indianの中で、Gallagherはこの変化を勧めています。
17. Rxe4
このルークでの取りが序曲です。一見不安定な位置取りに見えますが、、、
17. … d5 18. cxd5 cxd5 19. Rxe5



この手があります。こうしてexchange sacrificeをすることでa1-h8ダイアアゴナルが開き、b2のビショップが効いてきます。
19. … Bxe5 20. Bxe5 Qb6
黒はa1-h8ダイアゴナルにビショップとクイーンを並べられるのを避けなければならない。b6からは白クイーンが1手でいける唯一のダイアゴナル上のマスであるd4を押さえている。また、黒からd4を突く場合にもサポートできるし、b4のポーンも狙っている。
21. Bb2
この手がShirovの新手であった。
 
21. Qxb4!?
 


ここでポーンを取るのはいかにも危険だ。ラジャボフはKh7だった。
22. Rb1
単純に次にBg7でexchangeを取り返せる。クイーンはよけねばならないが、d4の守りは外せないことに気をつけなければならない。Qd4とされては黒厳しい。
22. … Qf4
逃げるマスはf4かh4ぐらいしかない。
23. Ba3
ゲーム中はこの手かBc1かで迷った。Rybkaで調べてみると、Bc1からBxh6はg5からビショップをトラップされるような変化もあり、本譜通り、Ba3の方が勝るようだ。
黒のポジションには弱点がたくさんある。ポーンは全て弱いし、e7のナイトは浮いている。その上、キングやクイーンの位置は不安定だ。もう既に白優勢だろう。
23… Rfe8 

ナイトを守るが、b7のポーンが落ちる。

24. Rxb7 

この手が入って、はっきり白優勢を意識した。

1ポーン落ちた上に黒のポジションには何の改善点もない。

e7のナイトは相変わらず当たっているし、他のポーンも弱いままだ。

24. …  Rac8 

黒は単純に守ることはせずに白のバックランクを狙ってきた。

25. Bxe7には25. … Rxe7 26. Rxe7 Rc1でクイーンが落ちる。

25. g3!

白はバックランクの脅威を消しつつ、クイーンを追い払う。非常に気持ちのよい手だ。

25. … Qf6 

ここが、クリティカルポイントです。

ゲーム中考えていたのは26. Bb2と26. Rxa7。

26. Bb2に関しては、26. Bb2 Qxe6 27 Qd4で白勝ちか?と考えたが、26. Bb2 d4 27 Bxd4 Qxe6と先にd4のポーンをビショップに取らすことで難しい勝負になるというのが読み筋だった。実際にはd4をクイーンで取って白が良いようだ。

一方で、26. Rxa7は26. … d4とされて以降の手順が思い浮かばなかった。しかし、Rybkaで調べてみると、clearな筋が見つかった。

27. Bxe7 Rxe7 28 Rxe7 Qxe7 29 Qxd4(下図)



Qxe6にはBd5があるため、白がexchangeの代わりに3ポーンを取り、白キングの安全性と黒キングの不安定な位置取りを見ると、はっきり白勝勢だ。実際黒は何を指せばよいのか迷うところ。Bd5を避けようと29. … Kh7(29… Kf8? 30 Qh8+)としても30 Qd7とクイーンを代えるぐらいでも勝てそうだ。

 

しかし、上記の手順が思い浮かばなかった自分は、、、

26. Bxd5? 

1手で優勢を失った。単純に26. … Nxd5 27. Qxe5 Qxe6でクイーンの交換が避けられず(28. … Qe1+ 29 Kg2 Qe4+がある)、むしろ白が守り切れるかどうか、という局面になる。

 26… Rcd8? 

しかし、黒もブランダーで応じることになる。

白の次の手が見えていなかったとのこと。

27. Rd7 

予想外の手を受けて黒も動揺したのだろう。このあと一気に崩れる。

28 … Kf8?? 

黒はd8のルークを避けるしかなかった。

 28. Bxe7+! Qxe7 29. Qf3+ Kg8 30. Rxe7 Rxe7 31. Qf6 

1-0

このゲーム以降、勢いを味方につけたようだ。

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