オポジション再考2(発展的な内容)  ーポーンエンディングの基本ー

前回、前々回に続いて、またしてもオポジションを扱います。いい加減にしてくれ、飽きたし理解したと言う人もいるでしょう。ですが、この記事を読んでもそんなことが言えますか?

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前回のおさらい

前回、ポーンエンディングの基本であるオポジションに対するポーンの影響について説明しました。

有利な側への影響

ポーンを持っている側はポーンのいるマスにキングを移動させることができませんため、ポーンと同じランク(横のライン)にいる場合には相手が間違えない限り、オポジションを取ることができません

不利な側への影響

これは分かりやすいと思います。ポーンが効いているマスに移動することができないため、優勢側がポーンの後ろにいる場合には不利な側はオポジションを維持できず、逆に必ずオポジションを取られてしまいます


ここまでが前回の内容でした。

ここまで、上記のポジションでは不利な側は必ずオポジションを取られるという話をしていますが、その具体的な手順は示していません。なぜなら、1ポーン+キングVSキングのエンディングではそんなことに関係なくドローだからです。

しかし、このオポジションを必ず取れるという事実が勝敗を決める場合があるとしたらどうでしょうか?今回はその話をしていきます。

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2ポーン+キング VS 1ポーン+キング

下図はかなり有名な局面で、エンドゲームの本を読むと必ず出てくると思います。この局面で黒番であれば(つまりオポジションを取っているのであれば)白は簡単に勝てます。aポーンが取れるからです。aポーンが残っているのがポイントなわけです。では、この局面で白番だったらどうでしょうか?

何度も言及しているように、白はポーンの存在により、常にオポジションを取ることができます。つまり、その具体的な手順を実現できれば、このポジションは勝てます

ポイントとなるのは白のキングがd5に行ったときに黒のキングはKd7とオポジションを取ることができないことです。では、白Kd5に対して、黒はどこに移動しなければならないでしょうか

答えは考えるまでもなくKc8です。白が自分のポーンに邪魔されてオポジションを取れないのは、Kc8とKc6の関係しかないからです。ただし、黒はKc8に居続けることはできないので、黒がKc8に移動したところでKd5と入れば黒は次にc8からでなければなりません。

具体的な手順を見ていきましょう。

オポジションを取る具体的な手順

先程書いた通り、オンリームーブです。

手待ちをするためにキングを下がります。手待ちなので、Kc4でも構いません。重要なのはc5のマスとd5のマスにいつでも移動できるようにすることです。

Kc7は常にKc5でオポジションを取られますから、黒はキングをc8とd8でうろうろさせるしかありません。

白キングは待ちます。

黒キングがc8に移動しました。狙い通りです。ちなみにKe8としてしまうと、Kc5, Kb6と簡単に侵入を許します。

これで、黒は次にKc7またはKe8に行くしかありません(念のためb8でもキングが侵入して簡単に勝てます)。白にオポジションを取られてしまいます。

どうだったでしょうか?難しいですか?

この手のポーンエンディングは比較的難しいと考えられており、白のキングの動きが三角形を描いているように見えるので、トライアンギュレーション(三角法)と呼ばれています。また、白キングと黒キングが移動するマスに番号を付けるCorresponding squaresというような概念が導入されていたりします。

しかし、少なくともこの問題に関してはただのオポジションだと思います。黒がd7に行けないということさえ意識していればそれほど難しくないです。

そもそもポーンの前後にキングが配置している際には不利な側が必ずオポジションを取られてしまうことはキング+1ポーンVSキングのポーンエンディングの時点で分かっているべきことだと思います。この講座では何度も繰り返し述べてきました。

さらに難解なポーンエンディングは?

エンディングの本を見るとさらに難解なポジションが紹介されていることもあります。しかし、基本的にはそういった問題はトレーニングや趣味としてはいいですが、「実戦のための必須のエンドゲーム」ではないと私は考えます。

私がこのように考えるようになった理由はJohn NunnがSecrets of Practical Chessをなかで次のように語っていたからです。

コレスポンディングスクエアは理論的見地から見れば面白いが、正直言って全く実践的ではない。

John Nunn in Secrets of Practical Chess

オポジションにトライアンギュレーションと、あとは頑張って考えれば何とかなるポジションしか実戦では起こらないよ。

John Nunn in Secrets of Practical Chess

私はJohn Nunnを信用する(したい)ので、私のアドバイスは不用意にポーンエンディングに突入するな、です。上記の本の中で、Nunnはポーンエンディングには意外な手が多いとも語っています。つまり、見落としが多いので、単純で答えが見えているようなポーンエンディング以外には突入すべきではありません。

まとめ

私は、有利な側がポーンを後ろから守っている局面では不利な側は必ずオポジションを取られてしまうと繰り返し述べてきました。1ポーンのポーンエンディングではなんの意味もなかったその事実が、今回勝敗に効いてきました。

終盤の基礎知識

Capablanca’s Best Chess Endings

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