Road to Chess Improvement

Road to Chess Improvementは個性的な本だ。扱っている内容が、というわけではないと思う。目を引くのは第1章の心理状況がゲームに与える影響と、それに打ち勝つ方法論を論じている部分ぐらいだ。第2章ではいくつかのオープニングについて扱っていて3章ではタクティクスとストラテジー、4章はコンピューターチェスを論じている。項目だけ見ると普通に見える。
 個性的なのはそれらの項目に対峙する著者の姿勢だ。非常に懐疑的なのである。著者Yermoは『チェスはいわゆる科学的な手法だけで解説することが出来ない。子供が言語を学ぶ時と同じで、科学的に説明できることもあるし出来ないこともある。』と本書の中で繰り返し述べています。僕はこれを『言葉によって表現できるものと出来ないものがある。』と言い換えてみたいと思います。科学的という言葉の使い方が気に食わないので。
 つまり、言葉によって表現できない事柄があるのだから本を読んでいるだけでは(あるいはチェススクールの先生の話を聞いているだけでも)限界があるというわけです。実際、Yermolinskyが経営するチェススクールでは『科学的な』手法によって誰もが1600-1800ぐらいまでは到達する。その後が問題になるわけです。では、どうするのか?Yermoはある一つの項目に関してそれに関する棋譜をいくつか提示してくれます。要するに同じテーマの棋譜をいくつも並べることによって感覚的にマスターしろということです。もちろん、解説はあります。しかし、結局のところ『言葉では表現できない』部分がある以上、最終的には『悟る』しかない、ということです。
 このような考え方を実践しているように思える本は他にもあります。僕のお気に入りのUnderstanding Pawn Play in Chessなんかもその一つでしょう。ただ、どうせ言葉で説明するだけじゃ分からないんだからとある意味開き直っている本はこの本だけです。

Road to Chess Improvement

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