チェスのタクティクスのモチーフを全て紹介しようという戦術大全の2回目です。
今回はディスカバードアタックとその関連モチーフについてまとめました。
最も基本的なタクティクスについては「基本の戦術パターン」としてまとめています。
ディスカバードアタック
Discovered Attack
ディスカバードアタックはその名の通り、味方の駒を動かすことによって他の駒の効きを通し、攻撃をすることです。
上図のポジションでは、白のルークの効きを味方のビショップが遮っています。これを利用してディスカバードアタックが生じます。
Bxg7+によってクイーンが取れます。
注意したいのはこの手は「ディスカバードチェック」ではないということです。次のディスカバードチェックの定義と比べてみてください。
ディスカバードチェック
Discovered Check
ディスカバードチェックはディスカバードアタックの一種ですが、味方の駒を動かすことによって他の駒の効きを通し、攻撃をし、その攻撃がチェックである場合です。
上図のポジションでは黒のルークの効きをナイトが遮っています。
ナイトをどかしてチェックとなり、同時にクイーンを攻撃しているので、クイーンを取ることができます。
ダブルチェック
Double Check
ダブルチェックは1手で二つの駒が同時にチェックを掛けることです。少し考えると分かりますが、ディスカバードチェックでどかした駒でチェックを掛けることでしか成立しません。
このダブルチェックはとても強烈なタクティクスです。なぜなら、チェックに対しては通常「味方の駒を挟む」、「チェックした駒を取る」、「キングが逃げる」の3つの対応がありますが、ダブルチェックに対しては論理的に「キングが逃げる」1択になるからです。
このため、ダブルチェックを成立させるためのサクリファイス等も実戦ではよく見られます。
上図は有名なReti – Tartakowerの一戦です。白のルークがビショップに遮られています。ダブルチェックをする方法は2通りですが、どちらが正着かわかりますか?
正着はBg5++です。Kc7にはBd8#、Ke8にはRd8#でどちらもメイトになります。
ウインドミル
Windmill
ウインドミルとは日本語では風車の意味で、強制的にディスカバードチェックを連続することです。その間に相手の駒を次々に取っていくことで駒得なり、チェックメイトを実現するタクティクスです。
最も有名なウインドミルのゲームは1925年のTorre – Laskerで、なんと世界チャンピオンのLaskerが負けたゲームになります。
上図のポジションがその有名なTorre – Laskerです。次にルークを動かすことによってディスカバードチェックになることは分かると思います。
1. Rxf7+
まずはチェックでポーンを取ります。
1… Kg8
他に手がありません。
2. Rg7+
2… Kh8
再びディスカバードチェックが生じる位置にキングが戻されます。このようにディスカバードチェックを受けることを避けられない、ということがウインドミルのポイントです。
3. Rxb7
最後の決め手の前にビショップを取ります。
3… Kg8 4. Rg7+ Kh8
次の1手は分かりますか?
5. Rg5+
最後はh5のクイーンを取ることで白は駒得になります。
この例では白はクイーンをサクリファイスすることでウインドミルを実現しています。それだけウインドミルが強烈なタクティクスであるということです。
まとめ
今回紹介したタクティクスはすべて「ディスカバードアタック」の一言で片づけても定義上は問題がないモチーフです。しかし、今回紹介したようにそれぞれに名前を付けて呼ぶことが一般的です。それだけそれぞれに重要だということでしょう。
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