ビショップの使い方 ー基本のチェス戦略ー

ピースの使い方のシリーズもいよいよ最後になりました。今回はビショップの使い方です。

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ビショップ、不器用な職人

いつにも増して適当な異名を付けてしまいましたが、片方のマスに移動範囲を制限されつつも場面によっては強力な攻撃駒になるビショップです。まずはナイトと同じく駒の特性を確認しておきましょう。

長い射程を持つ

主にナイトとの比較での考え方ですが、ビショップは長い射程を持ちます。

ただし、ルークのためのファイルやランクと異なり、ダイアゴナル(斜めのマス)の長さが位置により異なることは意識しておきましょう。a1からh8の黒マスとa8からh1の白マスのダイアゴナルが8マスあり、最も長いダイアゴナルです。

上図では、白のビショップは移動範囲が13マスあるのに対して、黒のビショップは7マスしかありません。ビショップを移動させることによって別のより長いダイアゴナルに移動させることも重要な戦略です。

一つのマスの色に固定される

ビショップは斜めのマスにしか動けないので、同じ色のマスにしか動くことができません。

このことと関連して、白マスに配置されているビショップ白マスビショップ黒マスに配置されているビショップ黒マスビショップと呼びます。

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グッドビショップ・バッドビショップ

ビショップを語るうえでまず知っておくべき知識が、「グッドビショップ」と「バッドビショップ」です。日本語訳では良いビショップ、悪いビショップで身も蓋もない名前ですが、定義があります。

ビショップは斜めのラインに障害物があると移動範囲が限られてしまいますが、その障害物としてとらえられるのが、ポーン、特に固定されたポーンです。

ポーンチェインを形成しているポーンのマスの色がビショップと同じ場合にはバッドビショップ異なる場合にはグッドビショップです。ポーンチェインと言っても盤上に複数のポーンチェインが形成されることもありますが、特にセンターにあるポーンのマスの色が重要になります。なぜなら、長いダイアゴナル(斜めのライン)を形成するにはセンターのマスを含む必要があるので、そこに障害物があると影響が大きいのです。

上図では、白のセンターポーンは黒マス、黒のセンターポーンは白マスに配置されています。このため、白の白マスビショップがグッドビショップ、黒の白マスビショップがバッドビショップになります。他のピースの配置はほぼ同じになっており、このビショップの働きの差の分だけ白の方がやや優勢であるということができるでしょう。

また、ポーンチェインではなくても、何らかの理由で固定されたポーン構造であればビショップがグッドであるかバッドであるかの判断材料にはなります。

活動的なバッドビショップ

バッドビショップであっても、ポーン構造の外側に配置されている場合には攻撃によい働きをすることがあります。このようなビショップを活動的なバッドビショップと呼ぶことがあります。

ポーンの外側にいるので守りには効かず、守勢にまわった時にはやはり良い働きをしません。

活動的なバッドビショップ
悲惨なバッドビショップ

上の2つの局面図はビショップの位置を入れ替えただけですが、随分印象が異なることが分かると思います。1つ目の図が活動的なバッドビショップです。

ツービショップの優位性

ビショップの特徴のところで説明したように、ビショップはチェスの白マス、黒マスのうち、片方の色にしか動けません。一方で、ビショップは初期配置で2つ用意されており、それぞれ異なるマスに配置されています。

つまり、2つのビショップはそれぞれお互いにたどり着けないマスを補いあう関係になっています。このことから、ビショップ二つが揃っている状態は、通常のマイナーピース二つ(ビショップとナイトの組み合わせ)よりも強力であると考えられています。このビショップが二つ揃ってる状態をツービショップ(two bishops)と呼びます。他にも同じ意味で、ダブルビショップ(double bishops)、ビショップペア(bishop pair)などいう呼び方もあります。

また、ツービショップを持っている側にはツービショップの優位性(two bishops advantage)と呼んだりします。

もちろん、初期配置ではツービショップは揃っているわけですが、駒交換が進んだ際に白黒片側だけに強力な ツービショップ が残ることがあります。

不用意にビショップとナイトを交換してはいけないと言われることがありますが、この ツービショップ の存在がその理由の一つです。

オープンな局面が好き

前述の通り、ビショップは障害物がない局面で働きがよくなります。チェスではそのような局面をオープンな局面と呼び、ビショップはオープンな局面で強力であると考えられています。

オープンな局面の定義はそこまでしっかりとしていない気がしますが、センターのポーン(盤の中央付近のポーン)が交換されてなくなっている局面を呼ぶことが多い気がします。センターポーンが残っていても、盤面全体にオープンファイルや障害物のないダイアゴナルが多い場合にはオープンな局面と呼ばれることもあります。結局のところビショップやルークが動きやすい局面と考えてもいいかもしれません。

センターポーンが固定されたクローズな局面
オープンな局面

局面をオープンにする

ビショップはオープンな局面が好きなわけですから、自分だけがビショップを持っているときには局面をオープンにする必要があります。これは一般的にはポーンブレイク(ポーンを相手ポーンの斜め前に推し進めて対応を迫ること)によって実現可能です。

時にはポーンサクリファイスしてでも局面を開いてビショップを活性化することもあります。

上図のポジションでは、黒がf6としてe5のポーンに選択を迫っています。このままポーンを取られてしまえばfxe5、dxe5でe5のポーンが弱くなりますし、exf6とすると黒のツービショップの働きが増します。この後黒はd5と突いてさらに局面をオープンにする狙いもあります。

一つ注意したいことは、クローズな局面が開いてオープンになることがあっても、その逆は難しいということです(交換されたポーンは戻ってきません)。ナイトを持っているから局面をクローズにするという狙いは難しいのです(クローズなポジションだからナイトを残そうという判断することは多いです)。

上記のように、ビショップが優位になる局面の方が作りやすいことが、ナイトよりもビショップが強くなる局面が多い(だからビショップの方が少し価値が高い)と考えられている理由の一つかと思います。

まとめ

本記事ではビショップの使い方について説明しました。ビショップはナイトと比べて射程が長いピースですが、ルークとは異なり移動できるマスの色に制限があります。このため、2つのビショップを保持していることが重要で、ツービショップという言葉があります。

また、ポーンは斜め方向に連なる傾向にあるため、ポーンの存在がビショップの働きに大きく影響しています。このことがビショップの良し悪しを決めており、ポーンが交換されてなくなっているオープンな局面で働きが強くなります。

著:アーヴィング・チェルネフ, 翻訳:水野 優
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