イタリアンゲーム ツーナイツディフェンス 4.Ng5はそんなに難しいか

 今回はOpening impressionではなく、ちょっとネットを調べていて気になった話です。チェスをキーワードにしてグーグル様で検索していると「チェス イタリアンゲーム」などがサジェストされることがよくあります。たぶん、ルパン三世の映画の影響なんじゃないかと思います。

 その中でも、白がNg5として露骨にf7の地点を狙ってくる変化について(おおむね黒難しいという視点で)言及している方が多いなと思いました。私も一時期1. e4 e5を指そうとしていたことがあり、このツーナイツのラインも勉強しました。メインラインの局面は確かに黒が1ポーンダウンで、ポーンはバラバラだし、よくわからんと思うのもわかる気がします。しかし、私はこの変化は簡単ではないけれど、わかりやすく、黒指しやすいと思っています。そのことについて記事にしようかと思います。まずは、定跡についてです。

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ツーナイツ 4. Ng5

1.e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 4. Ng5

さて、上記が問題の局面です。f7の地点が狙われており、一瞬どうすればいいんだろうと戸惑うと思います。少し勉強していればここでd5としてポーンを捨てるのが定跡であることを知っている人も多いでしょう。

4… d5

この手が成立することさえ知っていればこの後の手順を指すことはさほど難しくないように思います。

5. exd5 Na5

ナイトがビショップを攻撃していますが、白はこの局面で単にビショップを引くようではポーンを取り返されて面白くありませんので、

6. Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6

このようにいったんチェックを入れて黒をけん制します。黒はc6でポーンを交換することで、1ポーンダウンを確定させますが、ポーンによるビショップへの攻撃が継続しているため、逃げるのに1手使う必要があります(ここでQf3もありますが、白はクイーンを動かし、黒は次にピースを動かすでさらに展開に差が出ます)。

8. Be2 h6 9. Nf3 e4

h6に対してはNh3と下がる手もありますが、ひとまずこちらの変化を見ておきます。大まかな戦略は変わらないように思います。

さて、ここまで来て局面をどう思うでしょうか。ネットを見る限り黒番の立場として、この局面が難しいと考えている方が多い気がします。しかし、冒頭で述べたように私はこの局面が分かりやすいと思います。分かりやすいというのは白黒それぞれが考えなければならないことが分かりやすいということです。

まず、白の視点から考えてみましょう。これは明らかです。1ポーンアップです。そして、残りのポーンの構造の乱れがありません。一方で、黒に比べて展開が遅れています。単純に展開されている駒の数だけでなく、現状ではc1のビショップが外に出られないので、ポーンを突かなければなりません。e4のポーンがいるので、dポーンを突くと交換が避けられない(だからまずいというわけではないですが)など面白くない要素が満載です。そもそも現状でf3のナイトが当たっているので、よけなければなりません。

次に黒の視点から考えてみましょう。こちらの判断は少し難しいかもしれません。e4, c6,a7のポーンがバラバラに見えます。実際これらのポーンは弱いといえば弱いです。一方で、ビショップの効きを意識してみてください。非常に展開がしやすいことが見て取れます。またf3のナイトが次にどくので、白のキングサイドが弱くなります。Bd6、Qc7などで簡単に狙えます。一方で、a5のナイトだけは行き先が少なく、少々注意が必要でしょう。

私が分かりやすいと考える理由が上記のような評価をすることが簡単だからです。もしかすると「その評価が難しいんだ」と思うかもしれませんが、それはチェスを知らないということかもしれません。上記のような白と黒の不均衡はお互いの優位性を主張しあって戦う、非常にチェス的な局面だと思います。

そして、上記の局面評価で、私は黒が指しやすいと思います

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Eが黒指しやすいと考える3つの理由

私が黒が指しやすいと考える理由は以下の3つです。

アクティブな黒番の方が指しやすい

どう考えてもアクティブに指す方が楽です。白番なのに1ポーンアップで守り切ってくれというのはやる気が起きません。1ポーンダウンでもアクティブな局面のほうが俄然やる気が出ます。だって1ポーン取ったらもうイコールですよ。その勢いで勝てそうじゃないですか

Bc4、Ng5と指したのにこの局面ってどうなの?

また、白の気持ち的にもどうなの?って思います。だって、Bc4指した上にNg5でf7狙ったんですよ?攻めつぶす!って感じじゃないですか。なのに結果は1ポーンアップで耐えまくる。私、そんな人生嫌です

そもそも定跡の局面なんですよ

そして、最後に、この局面が定跡手順だということです。1ポーンダウンだけどアクティブな局面を選択することは実践の中でも多くあります。そのような際にはこの局面で本当に大丈夫なのか不安に思いながらも指すわけです。一方で、この局面は定跡手順です。もしかすると白がやや良いのかもしれませんが、この局面で問題なしと先人たちが判断しているわけです。そのうえでアクティブな局面を戦えるなら、こんな楽なことはないじゃないですか。

以上、生粋のシシリアンプレイヤーからクラシカルプレイヤーに贈る言葉でした。

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