今回は私がチェスを始めて10年以上お世話になった(そして妻に引導を渡された)キングズインディアンディフェンスについて解説します。私にとっては日本チャンピオン経験者を破るなど、数々の悦びを与えてくれた定跡です。皆さんにも同じような素晴らしい体験が届けられたら、と思います。
キングズインディアンディフェンスとは
Opening impressionsでも解説していますが、1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6という手順で始まるのが基本的にキングズインディアンディフェンスです。この手順ではなくても黒がキングサイドにフィアンケットを組み、白からのe4を防がない変化はすべてキングズインディアンでしょう。
キングズインディアンは定跡の変化も膨大ですが、3つのパターンに分ければ比較的取り組みやすいと思っています。
メインライン
まずはメインラインです。上記の変化の後、
5. Nf3 O-O 6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7と進むのがメインラインです。
図のようにキングサイドに集まったピースを利用して白キングを攻めるのが黒のプランです。ここからもたくさんの分岐がありますが、ポイントがあります。
ナイトをどかしてf5を突く
黒はキングサイドのポーンを突いて白を攻めるのですが、まずはf6のナイトをどかしてf5を突きます。ナイトがどく場所はh5がアクティブでよいのですが、白はNe1などとしてBxh5を狙ってくる場合があります。その場合にはNd7と引いてf5を突きます。
g4を狙う
黒はf5、f4、g5からさらにg4を狙います。必要であればさらにh5と突いてg4を狙って白のキングサイドを開きにいきます。これに加えてNg6、Qh5などとキングサイドにピースを展開。Bxh3などのサクリファイスを絡めつつ相手キングをメイトにするというのがメインラインの流れになります。
サイドライン
キングズインディアンディフェンスにはサイドラインも膨大にあります。私のアドバイスは、とりあえずc5突いておけばなんとかなる、です。
実際、ゼーミッシュ、アーベルバッハ、フォーポーンアタックなどのサイドラインにおいて、c5は黒のメインライン、あるいはメインラインの一つになっています。
c5の狙い
c5の狙いは端的に言ってしまえばベノニのように指す、です。
a6からb5の狙い。e6からexd5でeファイルを開く狙い、Bg4から使えていない白マスビショップを交換してしまう狙いなどを組み合わせて戦えば、黒問題ないだろうと思います。
メインからの分岐
最後はメインラインの途中で白が変化してくる場合です。ここではエクスチェンジバリエーションとペトロシアンバリエーションを紹介します。
エクスチェンジバリエーション
エクスチェンジバリエーションは黒のe5に対してdxe5と取ってしまう変化です。チェスの定跡で数あるエクスチェンジバリエーションと同様に黒にとってそれほど危険な変化とは考えられていませんが、白には明確な狙いもあります。
白の狙いはBg5とf6のナイトをピンにしてNd5と入ることです。これにより、黒は駒損を避けられません。下図のように、ルークを取る狙い、f6のナイトを取る狙い、e5、c7のポーンを取る狙いが組み合わさっています。
黒の対処はBg5としてきたらRe8とピンを外しながらe5のポーンを守るのが無難です。もし、白がNd5と先に入ってくればNxd5と取ってしまいます。
ペトロシアンバリエーション
ペトロシアンバリエーションは世界チャンピオンのペトロシアンから名前が取られた変化です。黒のe5に対してすぐにd5と突く変化です。
この変化もメインラインと同じく黒はキングサイドを攻めますが、意識しておくべきことがあります。
メインラインと比べるとb8のナイトをキングサイドアタックに参加させづらいこと、d5と突いたことによって生じたc5のマスを利用できることの2点です。
つまり、b8のナイトがいない分キングサイドアタックは弱まりますが、c5のマスとb8のナイトが守りに効くわけです。
黒のメインラインはa5としてc5のマスを確保(b4とポーンを突かれない)したあと、a6またはd7からc5にナイトを配置するか、もしくはNa6のまま白からのb4を牽制する変化です。
動画での解説
Youtubeのチェス夫婦チャンネルでもブログとほぼ同様の内容の動画をアップしています。動画の方が好きという方はそちらも参照ください。
まとめ
今回は私が長年愛用してきたキングズインディアンディフェンスを中級者ぐらいまでを対象の黒番向けレパートリーとして紹介しました。この記事で紹介したことを基本に徐々に自分のオープニングにしていけばよいと思います。
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