日本語の定跡本2冊 レビュー 

今回は日本語の書籍の中でも古くから売られている2冊の定跡書を紹介します。

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今回紹介する本

河出書房新社
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著:東公平
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1冊目は以前はチェスマスターブックスというシリーズで売られていたシリーズの1冊で「定跡と戦い方」。

もう1冊は東公平さんの本で、チェス入門というタイトルなのに定跡編という副題がついています。

とても古い本です。

まず、この本は非常に古い本です。少なくとも初版は1975年で、私が中学生の時(25年前)に図書館で借りて読んだ覚えがあります。ヒガシ・コウヘイのチェス入門の前書きこそ2010年の日付がありますが、装丁を変えたか何かの時に加えたものでしょう。内容的にはどちらの本もほぼ変更がないはずです。

2冊の比較

どちらも定跡をメインに扱っている本ですが、違いもあります。

「定跡と戦い方」の特徴

こちらの本の方が図面が大きく、ひたすら定跡を載せている内容になります。項目分けの違いもありますが、ヒガシ・コウヘイのチェス入門とほとんど載せている定跡数が変わらない(むしろこちらが少なく表記されている)ため、解説自体はこちらの方が詳しいです。

「ヒガシ・コウヘイのチェス入門」の特徴

「チェス入門」とタイトルにもあるように、チェスのルールの説明もあります。それに加えて、タクティクスに関する解説や実戦棋譜もあります。それでいて定跡解説についても、通常の定跡を網羅した部分に加えて、ハメ手定跡として10種類ほど紹介するなど盛りだくさんの内容になっています。このため、局面の図面が非常に小さくなっています。

棋譜の記載方法への注意

一つ注意点としては、棋譜の記載方法に特徴があることです。これはこのシリーズ全体(+ヒガシコウヘイ氏の本も)に言えることなのですが、駒を取るマークとチェックメイトのマークが現在普通に使われているものと異なっています。

この本の中では「:」を駒を取るマークとして使っており、チェックメイトは×マークです。

通常は駒を取るマークは「x」、チェックメイトは「#」です。

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客観的評価

古い本ですし、非常に厳しい評価をしようと思っていましたが、読んでいて気が変わりました。ある程度定跡を網羅していますし、「ヒガシ・コウヘイのチェス入門」の中の著者の語り口には魅力があると感じました。

定跡なのに古い本であることは?

もちろん、定跡書という時代とともに移り変わっていくべき内容の本としては古いことは致命的です。ただし、これらの本は古い新しいを議論するほど定跡を深く紹介している訳ではないです。定跡を網羅的に紹介する内容としては成立していると言ってもいいでしょう。

ただし説明はほぼ手順のみ

どちらの本も同じですが、定跡の歴史などへの言及はありますが、なぜこのような手をさすのかの説明はほぼなく、手順を載せているだけです。

図面などの古さ

やはり古い本であるため、いくら装丁を綺麗にしても中身の図面などの古さはぬぐえません。特に「定跡と戦い方」の方は文章が非常に読みにくいです。変化手順が色々書いてある文章はただでさえ読みにくいものですが、行が詰まっており、太字などの文字の装飾もないので、読む気が失せます。

主観的評価

こちらでは「主観的」ということで少し厳しいコメントをさせてもらおうと思います。

これほど長い期間売られていること自体が問題

書名に個人名があるので、個人攻撃であると解釈されると困るのですが、これらの本のように古い本が長年売られ続けていること自体が日本チェス界が発展していないことの証で、問題です。出版社の人に「どうやらこの本古いみたいだな、新しい本作らないと」と思わせなければなりません。「小島慎也のチェス入門:定跡編」読みたくないですか?もし読みたいならばこの本は買わない方がよいと思います。

私が思うに、

  • チェスの本はあまり儲からない
  • 既存の本が結構売れている

という二つの点がポイントとなって、この本が売られ続けているのだと思います。既に紹介した渡辺暁さんの本や小島慎也さんの本が好調に売れているけど、うちらの本売れないなぁ、という状況になって初めて新規出版を検討するかもしれません。

なにせ、このヒガシコウヘイのチェス入門とチェスマスターブックスシリーズ(とは今は呼んでないみたいですが)は昨年末になって新装されています。クイーンズギャンビットブームだし、昔の本綺麗に装丁すれば売れるんじゃんって思われてますよ?日本のチェスファン舐められてます。もちろん、事実その通りという部分があるのでしょう。ですが、このままそのような状況が続いていれば、日本のチェス愛好家の利益になりません。全国のチェスファン、立ち上がれ!!

敢えて言おう

この本読むぐらいならうちのブログ読め!!

チェスをよく知らない人から見たら、ネットでオープニングについて書いてある記事なんて怪しいでしょう、本の方が良いはず、と思うかもしれません。いや、そういう情報もネット上にはたくさんありますが、うちのブログの情報はどちらの本と比べてもはるかに役に立ちます。元々はチェスの洋書に書いてあることをかみ砕いて日本語で書いているだけです。

Trust me!

自分で言うのもなんですが、うちのブログのOpening impressions、特に最近の投稿に関しては私のトーナメントプレイヤーとしての知識と経験が込められています。細かな手順までは議論する気はありませんが、定跡変化に対する定性的な記述としてはここ以上の記述が日本語でなされることはほぼあり得ないでしょう。書籍、ネットどちらでもです。

まとめ

私個人としてはどちらの本もオススメはしていません。ただし、現状で序盤定跡を網羅した日本語の書籍はこの2冊ですし、持っておきたいという人もいるでしょう。どちらか1冊ということであれば、私は「ヒガシ・コウヘイのチェス入門」を選びます。

ここからはじめるチェス
渡辺 暁 (著)

マンガで覚える図解チェスの基本
小島 慎也 (監修)

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